綺麗な花に棘がある。【茅ヶ崎至】 (ページ15)

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先輩と私以外に聞こえてきた声に驚いて勢いよく起き上がると、天井に頭をぶつけた。……あ、ロフトなんだこのベッド。なんて、呑気に考えている場合じゃない。

その声の持ち主は、かなり意外な人で。というか、私も知っている人だったのだ。

『う、卯木さん！？』

「えーっと…茅ヶ崎のとこの後輩だったっけ？」

『…弓原です。何回か会議で顔合わせてますけど…』

「ごめんごめん。人の顔と名前を覚えるのは苦手なんだ。」

『というか、何で卯木さんが…？まさか…同棲してるんですか？』

恐る恐る訪ねれば、何とも素直に「うん。」という返事が。どういう関係ですか！？と食い気味な私に、先輩も体を起こして、「誤解を招くような返事しないでください。」と呆れたようにため息をついた。

「とりあえず、俺と茅ヶ崎の話より、君が何でここにいるのか俺はすごく興味あるけど。」

『……私も知りたいです。』

「茅ヶ崎が女の子をお持ち帰りしてくるなんてね。」

『絶対私のこと好きですよね！？』

「んなわけあるか。」

『いっだ！！！！』

ゴチンといい音を立てて、私の頭に拳が入る。またこのやり取り………。会社でよく見る胡散臭い笑顔を浮かべた先輩が、一から説明をしてくれた。

ホテルのことがあったのにも関わらず、懲りない私はまた酔っ払ってしまって、先輩にかなり迷惑をかけたらしい。おんぶを強請った挙句、寝てしまった私を送って行こうかと思ったけど、私の家を知らなかった先輩は仕方がなく自分の家まで連れてきたとのこと。

『大変申し訳ございませんでした。』

「茅ヶ崎が誰かの世話を焼くことなんてあるんだな。」

「先輩は俺のことを何だと？」

「干物オタクだろ。」

「……………」

「おっと、口が滑った。」

何の話？私だけわかっていないこの状況に、先輩と卯木さんは何故かお互い顔を見合わせてニコニコしていた。目が笑ってないけど。居心地悪いなー…と思っていたら、扉の向こうからドタバタと足音が聞こえてくる。

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