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(貴女side)
山積みの仕事を全て片付けて、時間は定時ギリギリ。今日そこは残業回避だ!そう思ってPCをシャットダウンしようとしたその時。課長から、書類の不備を伝えられ泣く泣く残業。結局今週ずっと残業だった…!
「弓原ちゃん、また残業?」
『…あ…はい。お疲れ様です。』
「手伝おうか?」
同じ部署の先輩が声をかけてくれた。けど、私この人苦手なんだよなぁ。チャラい系というか、毎回飲み会では私の隣に来てやたら絡んでくるし、女性社員に見境なく声をかけているのもよく知っている。
一部の女性社員からはモテているらしいが、大多数の人は苦手だと思うことが多いだろう。
私はこの手のタイプの男はかなり苦手だ。あんまり関わりたくないなって思ってしまう。
『大丈夫ですよ。そこまで量ないですし。』
「でも、今日金曜じゃん。早く帰れた方がいいっしょ?二人でやった方が早いって。」
『いや、本当に大丈夫なんで。』
「遠慮しなくていいのに!」
『(遠慮じゃないんだが)』
ここでガツンと言えればいいんだけど、相手は一応先輩だし、ここで雰囲気悪くしたくないしなあ。へらりと笑って、この人からどう回避しようか考えていたら、ふわりとコーヒーの香りが鼻腔をくすぐった。
「弓原、コーヒー淹れたけど飲む?」
『先輩…!飲みます!』
「ん。」
『わーい!』
「残業なら俺が一緒に残るから大丈夫だよ。」
『え?私別に一人で…』
「ね?」
『…あっ、はい。』
にっこりと爽やかに笑った茅ヶ崎さんに、「結局お前かよ。」と軽く舌打ちをして、その先輩はオフィスから出て行ってしまった。あちゃー…なんか、やらかしちゃったかな。
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作者名:しあ | 作成日時:2019年6月27日 22時