ep301 ページ27
２つあった白い月は
いつのまにか一つに
なっていて…
姉の姿は…消えていた。
「…！？ぉねぇちゃん？」
呼びかけにも 返事はない。
だけど、アタシの肉体は眠ったまま
病室だけは、沢山の人が出入りして
騒がしくなってる…
何もない世界にアタシは独り取り残され
完全に戻るタイミングも
消えるタイミングも失っていた…
その時、ふいに過ぎったのは
白石先生に言われた あの言葉。
『…君が 戻れるという保証はないよ。
それでも 気持ちは変わらない？』
戻るつもりなんて なかったし
戻れなくていいと 思っていた…
だけど…今は…
違う…。
広臣の隣で笑って、
一緒に美味しいモノ食べて…
もう一度、広臣の隣で…
でも….あの場所は…
お姉ちゃんの居場所。
あの人達は 私ではなく、きっと
お姉ちゃんが戻ってくるのを待ってる
『そんな事ない。
お願いだから、命の匙を…投げないで』
…お姉ちゃん？
『みんなはあなたを待っている。
必ず温かく迎えてくれる。 後は…
あなたが本当にあの場所に戻りたいと
思うか、どうか。』
…戻りたい。
瞳をぎゅうっとつぶって 祈ってた時
〜♪♪〜♪ 〜♪♪♪
どこか懐かしい音楽が耳に響く。
誰かが 鼻歌のように奏でている
メロディー。
少し…切なくて。
柔らかで…心が温かくなる
……！！
間違いなく 私はその曲を知っていた
『…ママ ……？』
ママの弾くピアノ 好きだった
フラッシュバックする 幼い記憶
それと同時に 耳に飛び込んできた
包み込むような 優しい歌声
『りゅうくん、歌じょうずね』
『うん、ほんと。歌手になったらいい』
…りゅぅ、…くん？
懐かしい曲が終わると…
優しい歌声と共に 聞こえた愛しい声
2人が 奏でるアカペラのハーモニー
頭の中の モヤモヤした霧が
スッ…と 晴れて行った
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作者名：ひろみ
| 作成日時：2021年7月2日 19時
