ブルームーンストーン4

169 omi ページ20

“ガッチャン…”








洗い物をしていたAが、グラスを落として…割れた音が静かな部屋に響く









『それって…どういう意味？』









グラスの破片を拾い集めながら、俺の言葉の意味を、理解出来ずにいる









割れてしまったのは…Aが、一番気に入っている

　 バカラのグラス。









俺たちが付き合う事になって、メンバーがみんなで買ってくれた、ペアグラスだった。









それを、拾い集めようとする
Aの手は恐らく震えているだろう









『これは、何か特別な事がある時だけ使う…特別なグラスね。』









…って…言っていた…









ずっと大事にしてきた絆までも、グラスと一緒に…割れた気がした









それだけ、大切にしてきたグラスを落とすほど、Aが動揺してるのが手に取るようにわかり…









俺は、内心焦っていた。だがそれを気づかれるわけにいかない









音楽雑誌のページの片隅に、敢えて視線を集中させた…









俺がもう Aの事を、何とも思ってないと….思わせるために。









そばのテーブルに 雑誌を置いて、Aの顔を、真っ直ぐに見ると、みるみる白い肌が青ざめていく









今にも泣き出してしまいそうな表情をしながら、それでも必死に 涙を堪えている









ごめん。




ごめん。





ごめん。









何度も…心の中で 繰り返す









か細く…小さな肩を、本当は

今すぐ、強く 抱き締めてやりたい。









少しでも気を抜くと、本当の想いが 溢れ出してしまいそうで









俺は、言葉に出来るだけ、感情を入れないよう、次々と冷たい言葉を Aへ向けた。

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