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『今日はなんか決めてるの？』
突然の「俺の」発言で赤くなってるであろう顔を落ち着かせたくて話をふる。
今日はジェノくんが予定たてるって言ってたし。
『ジェノくん待って、早い〜』
私の声に止まって振り向くジェノくん。
「あ、ごめんなさい。ついスピード出しちゃいました」
『いや、私の運動不足だね…』
彼が計画したのはサイクリングだった。といっても、目的地までの移動手段としてなんだけど。
事前にスカート履いてこないでって言われてたのも理解した。
自転車を買って普段から乗りこなしてるジェノくんは、自分の自転車ではないレンタルの自転車だって結構なスピードで走る。私も最初でこそ、川沿いの気持ち良い風を受けてスイスイ漕いでたけど、向かい風とか受けて体力消耗して、うっかりするとジェノくんが遠くに行っちゃってて、あわてて追いつく。
「もうすぐなんで」
今度は私をチラチラ気にしながら私の斜め前を合わせて走ってくれるジェノくんの広い背中に胸が少しキュッとなった。
そして川から海に少し近づいてきたころ、ジェノくんの自転車のスピードが落ちて
目的地に到着するんだってわかった。
『到着？』
「です。おつかれさまでした〜」
ジェノくんについて自転車を降りてひいていくと、小さなお店。
「あら、ジェノくんいらっしゃい」
「こんにちは〜」
ジェノくんがお店に入るなり聞こえた声。
お店の中には椅子に座った可愛らしいおばあちゃんがいた。
名前を知ってるってことはよく来てるのかな。
ジェノくんに促されて席に着くと私にもいらっしゃいって声をかけてくれた。
『よく来るの？』
「はい、自転車乗ってるときに見つけてからは」
ジェノくんによると家族でやってるお店で、おでんがおいしいんだって。
あのおばあちゃんが看板娘なんですよって教えてくれた。
場所的にどこの駅から歩くにも少し遠くて、車で来る感じの場所でもないから
確かに自転車に乗らなければ来ないかもしれない。
「Aさん連れてきたいなってずっと思ってたんですけど少し疲れさせちゃいましたね」
『ううん、大丈夫』
運ばれてきた冷たいコーラで乾杯したら、シュワシュワの炭酸が心地いい。
窓から見える水辺の景色と、街中では見られない大きさで飛んでいく飛行機にも感動して
疲れたことなんかすぐに忘れて自転車でここまで来てよかったなって思えた。
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作者名：chato | 作成日時：2022年4月12日 23時
