戦う理由 (ページ19) - 小説/夢小説

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拾捌話ページ19

倉持side

沢村がAの元に行って1週間。流石に1人の5号室も慣れてきた。その間に3年生との試合があって、大きな収穫もあったがやっぱり、何かが足りない気がした。

沢村は馬鹿だ。何時もうるさいけどチームのムードメーカー的存在であることに改めて気付いた。よく泣くし、笑う。そんな彼奴はイップスになった時、誰にも頼ろうとしなかった。なんて声をかけていいかわからなかったが、Aの言う通り、傍にいるだけでも少しは違ったのかな？

多分違ったと思う。俺が、もしイップスになって、沢村と同じ境遇になっていたらそばにいて欲しいと思った。誰でもいいから傍に……。

それが出来なかった自分が、情けないとも思った。Aは感情を読み取る事ができる。なんでこの気持ちが分かるのかって言うぐらいに。

御「倉持、おはよ」

『御幸、ノリ、白州、おはよ』

川「もう1週間か……」

白「あっという間だな」

3人「嗚呼」

今日も変わらず、朝練が始まる。始まる前に、監督が集合をかけた。

片「嘉田海から連絡があってな、沢村は3日後に戻ってくるそうだ。」

全「本当っすか？！」

片「嗚呼、心身ともに落ち着いてきたし、打者がいてもインコースに投げれるようになったからってな」

驚いた。いきなり沢村の話をされて、帰ってくるって言われたら誰だって、驚かずにはいられないだろ。

御「兄貴は、随分驚いた顔しているね」

『うっせぇ！俺が何時彼奴の兄貴になったんだよ！』

前「ほんとお前らは素直にならんのぉ」

『そういうお前もだろ！』

川「結局俺たちは素直にはなれないんだよ。特に御幸とかな」

白「そうだな」

御「白州、なんで納得してんだよ？」

川「俺らは御幸達より、素直だと思うんだけどな……」

『ま、それは言えてる。2年の中で1番素直じゃないのは御幸だよな』

2年「嗚呼」

その素直になれない部分が、今回は沢村を傷つけてしまったんだけどな。たまには、自分の感情に素直になることも大切だということを知った。

サウスポーでムービング使い。

エースになれないと言われ続けても地に足をつけて這い上がってきた沢村を俺らはすごいと思っている。打たせてとるピッチングで、守備にも攻撃にもリズムを作ってくれる。そんな彼奴の後ろを守るのが楽しい。降谷や、ノリとは違う、野球を全力で楽しむアイツの背中を押してくれたAには感謝しかない。