恋する群青 (ページ18)

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違う、

違う、と。

何度も自分に言い聞かせた。

拓弥が言っていた通り、海の言葉や優しさに深い意味なんてない。

あの時彼女達に責められていたのが、例えばユカだったとしても彼は同じ事をするし、同じ言葉をかけると思う。

分かっているつもりだった。

それでも、あの時の彼の優しさは、弱っていた私の心に驚く程一瞬で染み渡っていった。

「おい、聞いてんのかよ」

その声にはっとして、今が図書委員の放課後当番の最中だった事を思い出す。

受付カウンターで一緒に貸し出し係りをしている拓弥が、携帯を弄りながら横目で私を見ている。

不運な事に、委員会決めのジャンケンで負けた私達は面倒な図書委員を担当する事になってしまった。

「ぇ、あ…ごめん何だっけ」

「だから、文化祭部活で何かやるのかって」

「あ、うん。やるよ」

「何やんの」

「生徒会長が歌歌うらしくて、そのバックダンサー頼まれた」

「へぇ」

さして興味が無さそうに、視線を携帯へと戻す。

放課後にわざわざ図書室に本を借りに来るような生徒はほとんどいないから、正直暇だった。

だから色々と考えてしまっていて。

「……お前、変」

「え？」

「夏休み明けくらいからずっと変」

隣に座っている拓弥を見ると、視線がぶつかる。

拓弥の大きな瞳を見ていると、全部見透かされている様な気がして思わず目を逸らす。

「…そんな事ないよ」

「………海か、」

「………違う」

「お前さ、隠し事出来ないんだから諦めろって」

「…………」

何も言い返せない。
でも、自分の中でもまだ整理が出来ていないこの気持ちを、拓弥に話してもいいのか分からない。

「……やめとけって言ったろ」

「…うん」

「…絶対悲しい思いする」

「…分かってる」

海は、私の事は友達としか思っていない。
多分この先もずっとそう。

私自身も、今のこの関係を壊したくない。

「だから、誰にも言わないで」

「は？」

「私はずっと海の友達でいたい」

「…………」

「それだけでいいから」

ずっと、彼の一番の"女友達"でいられればいい。

それでいい。

「…んだよそれ」

「私がいいって言ってるんだから拓弥は黙ってて」

「そんなの絶対限界がくるだろ」

「いい」

「………あっそ」

そう言って椅子から立ち上がる拓弥。
時計を見ると、もう終わりの時間になっていた。

軽く見回りをしてから戸締まりをして二人で玄関へと向かう。

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