28 ページ28
.
「Aの家、祐基んちの隣なんだよな」
「…あ、うん」
最寄り駅に着いて、アパートへの道を二人で歩いている時に小笠原くんから出た祐基くんの名前。
彼の名前を聞くとどうしても駄目だ。
「………どうした？」
「………」
「………祐基と、何かあったのか？」
私の顔を覗き込みながら言う小笠原くん。
「…こんな事、小笠原くんに言うのもどうかと思うんだけど、」
「うん？」
「わたしね…祐基くんが好き、なんだと思う」
やっぱり私少し酔ってるのかな。
言わなくてもいい事を思わず口走ってしまった。
「…祐基くんに今、彼女がいる事は分かってる」
「…………」
「だから、何も期待してないんだけど」
「……Aは、それでいいのか？」
正直言うと、100%それでいいとは思ってないし、少しの欲は…多分ある。
でも、自分の気持ちより大切にするべきものがあるとも思うから、と強がってみる。
「…うん、いいの」
「…そうか」
小笠原くんは、そう言ったっきり黙ってしまう。
何言ってるんだろう、私。
こんな事言ったって困らせてしまうだけなのに。
「小笠原くんは、いないの？」
「え？」
「彼女はいないって言ってたけど、好きな人とか」
モテるのに、彼女がいるとかそういう話は聞いたことがない。
あまり他人に自分の事を話すタイプではないのは分かってるけど、少し気になった。
「…いるよ」
「え、そうなの？私の知ってる人？」
「知ってるっていうか…まぁ、うん」
「へぇ〜！どうなの？上手く行きそう？」
「んー…どうかな」
地面に目線を向けながらそう言う小笠原くんは、何かいつになく弱気な反応だ。
「あんまり自信ないの？」
「ま、片想いだからさ」
「そっかー…じゃあ私と一緒だね」
小笠原くんみたいな人でも片想いとかするんだ。
そんな事を考えていると、アパートが見えてきた。
「あのアパートだからここまでで大丈夫だよ」
「あ、そうなんだ」
「うん、本当にわざわざありがとね」
「いーえ、どういたしまして」
そう言って小笠原くんは「じゃあまたな」と言いながら駅への道を歩いて行った。
小笠原くんが好きな人と上手くいくといいな。
そんな事を考えながらアパートのエントランスへと入った。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 281人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
京(プロフ) - フレッシュいちごパフェさん» コメントありがとうございます。拙い文章で申し訳ございません。全体的に分かりにくかったでしょうか。もしこの部分というのがありましたら修正したいと思います。わざわざご指摘ありがとうございました。 (2019年4月1日 20時) (
レス) id: 4f5277fea8 (このIDを非表示/違反報告)
フレッシュいちごパフェ(プロフ) - 誰が話しているか分かりません、面白いけど、誰が話しているかわからないのがちょっとマイナスです (2019年4月1日 16時) (レス) id: bb430c8d04 (このIDを非表示/違反報告)
京(プロフ) - 菜々子さん» コメントありがとうございます。そう言って頂けて嬉しいです。これからもよろしくお願い致します！ (2019年2月20日 17時) (レス) id: 4f5277fea8 (このIDを非表示/違反報告)
菜々子(プロフ) - すごく面白くてキュンキュンしてます！更新楽しみに待ってます！ (2019年2月20日 2時) (レス) id: e1ec4f3b2d (このIDを非表示/違反報告)
なつき(プロフ) - はい！！ (2018年11月29日 3時) (レス) id: a6267e5e8e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：京 | 作成日時：2018年11月7日 21時
