42 ページ42
.
祐基くんのアパートの階段を降りて、隣にある自分のアパートに向かって歩き出した時、
「ねぇ」
後ろから声が聞こえた。
反射的に振り返ると、ジャージ姿にマスクをした男性が立っていた。
明らかに雰囲気がおかしい。
不味い予感がする。
こんな時間に道を尋ねる人なんていないだろうし、自分の知り合いでもなさそうだ。
「……？」
「あの男、誰？」
「…え？」
「一緒に部屋に入って行った男だよ」
祐基くんの事を言っているんだろう。
でも何でこの人にそんな事聞かれるんだろう。
怖い
どうしよう
「ねぇ…誰なのあいつ」
「………」
「もしかして付き合ってるの？」
「…ぇ、あ」
「ああいう男がタイプなの？」
段々と男性が近づいてくる。
怖くて声が出ない。
「俺ずっと見てたんだよ」
「…ぇ、…」
「この前もあの男と一緒に歩いてたよね」
「………」
そういえば少し前から、歩いている時に背後から視線を感じる事が時々あった。
気のせいだろうとあまり気にしない様にしてたけど、まさかこの人が……？
マスクのせいで顔が良く見えないけど、この男の人…何処かで見た事がある気がする。
恐怖で回らない頭で考えると、数時間前の出来事を思い出した。
──この人…
駅前のコンビニの店員さんだ。
何で…？どうして私の事を知ってるんだろう。
「どうして何も答えてくれないの」
突然、ガシッと強い力で両腕を掴まれて、男の方へ身体を引き寄せられそうになった。
「！ぃ、や…」
「あいつより俺の方が君を知ってる」
「…ゃ、めて」
恐怖で声が出なくて助けも呼べない。
どうしよう
怖い
身体が動かない
もうダメかもしれないと思った時、
遠くの方から車が一台こちらに向かって走って来た。
それに気づいた男性の手の力が一瞬緩んだ隙を付いて、思い切り腕を振り払い自分が出せる全力で逃げた。
思わず走り出した私の足が向かったのは、自分の家ではなく祐基くんのアパート方だった。
何度か足が縺れて転びそうになったけど、何とか階段を駆け上がり、壊しそうな勢いで玄関の扉を開けた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 210人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
京(プロフ) - みさん» コメントありがとうございます。たくさんの嬉しいお言葉恐縮です...！完結まで見届けて頂きまして本当にありがとうございました！番外編の方もよろしくお願い致します。 (2019年2月25日 10時) (
レス) id: 4f5277fea8 (このIDを非表示/違反報告)
み(プロフ) - はじめまして、ほぼ毎日ドキドキしながら更新を待ってました！完結お疲れ様でした。ラストに近づくにつれて涙止まらなかったです…。完結してしまって寂しいですが、番外編も書かれるとのことで最後まで楽しみにしています！ (2019年2月25日 0時) (レス) id: 47a502277b (このIDを非表示/違反報告)
京(プロフ) - まのさん» まのさん、コメントありがとうございます。拙い文章ですが、これからも読んで頂けると嬉しいです！ (2018年10月17日 22時) (レス) id: 4f5277fea8 (このIDを非表示/違反報告)
まの(プロフ) - だいすきです…すごく大好きです…！更新楽しみにしています……！ (2018年10月17日 20時) (レス) id: 884b859a47 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：京 | 作成日時：2018年9月18日 1時
