21話 傷と傷 ページ22
今剣は結界を叩き続ける。
今剣「よしつねこうをまもらないといけないんです!だしてください!」
貴方「それは出来ない。義経公の運命を変えることは許されないの。今剣。戻っておいで。」
私は決して慌てることなく冷静に話しかける。
今剣「だしてください。」
貴方「出来ないわ。」
今剣「それならっ!」
今剣は担当を鞘から抜くと私に向かってくる。
まるで、初めてこの本丸に来た時のようだった。
私は刀に手をかけるが、さやから抜くことはなく、手を離した。
今剣は躊躇いなく私に刃を突き立てた。
私は、今剣の刀を右腕で受け止めた。
今剣「なぜかたなをぬかないんですか!」
貴方「私はあなた達に刀を向けないと誓った。それに今私が刀を抜けばあなたは怒りに身を任せ、堕ちてしまうわ。」
今剣が私の言葉に反応をし、手の力を緩めたのを見て無事である左手で今剣を抱きしめた。
貴方「義経公を失ったこと。守れなかったこと。それはたしかに辛いこと。でも、その歴史を今なかったことにしたのなら、未来が変わってしまう。歴史を変えてはいけないの。
過去を忘れろなんて言うわけじゃない。
過去から貴方が何を学んだかが大切。それは忘れてはいけない。
今剣。悔しかったのよね。義経公を守れなくて。辛かったのよね。義経公を失って。
いつでも話ならいくらでも聞いてあげる。
今剣。必ず私が守るから。
戻っておいで。」
今剣「……A………さん………?……ぼく、……」
貴方「よしよし。大丈夫。」
ポロポロと涙をこぼす今剣の背をさすり、私は右腕を今剣に分からないように今剣の背中に回すと、左手で刀を引き抜いて、小さな布切れで血を拭うとそっと鞘に戻した。
血に汚れた右腕を再び自分の背に回し、隠した。
今剣が落ち着いて、泣き疲れ、私の腕の中で眠ったのを見計らうと、結界を解いた。
貴方「岩融。三条のみんな。あとはお願いするわね。……今剣は大丈夫。帰ってきたよ。」
三日月「感謝する。」
小狐丸「…傷は…」
貴方「大丈夫よ。……今剣には、黙っておいて。なにか聞かれたらこの傷は私が出陣で負ったものだと言ってね。」
私は右腕を隠したまま、三条部屋をあとにした。
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作者名:乃華龍 | 作成日時:2018年2月12日 0時