【黒バス】藍色のバスケ〔C〕【男主】 (ページ9)

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ゲームが始まった。

3対2の不利がある中、僕はミスディレクションを使う。
最小限の動きで彼らの視界外へ外れながら、巻き込んでしまった藍色の髪の彼への疑問が頭をよぎる。

影が薄い僕。一人ボールをついていればいつも、近くを通った人が僕に気づかず幽霊だの妖怪だのと騒ぐ。

三軍時代にあった体育館での出来事。
青い髪の彼がいい例だ。

なのに彼は、僕の影が薄いことに気付いていないのか、今戦っている人達と同じ反応が全く見られなかった。

そして彼が言った言葉。

『なるべく受け取れるように”調整”する』

その言葉の意味を理解するのは、そう難しいことではなかった。

なぜなら、彼は僕の目の前で…

一瞬とも言えるその間に、三人組を軽々と目にも留まらぬ速さで抜き去ってしまったのだから。

「……は？」

「今、何が……。」

相手が零した声に激しく同意したい。
レイアップを決めた彼は青のワイシャツの袖を捲りながら僕に駆け寄ってくる。

まっすぐ来ることから、彼にミスディレクションは意味をなさないと確信した。

こちらを伺うような表情をする彼。
黄色の髪の彼よりも遥かに美しく整った容姿を見て、思わず瞬きを繰り返したさっきの失態。
それを思い出し、初めて無表情で良かったと思った。

でなければきっと僕は、凄く間抜けな顔をしていたはず。

「どうだ？」

「…見えていたか、と…聞いてるんですか？」

「あぁ。で？」

「無理です。速過ぎて見えてませんでした。」

即答する僕に彼は、ならもう少しか。と言ってボールを奪いに駆け出した。

相手の背後からスティールしたボールを簡単にゴールへ持っていく。
……僕は必要なさそうだ。そう思うと、顔が自然に下を向く。

自分の足元の地面を見ながら改めて思う。

やっぱり僕は…

バスケを辞め──「おい、前ｯ！」

「？──ｯ！」

視線を上げるとボールが眼前に迫っていた。
慌ててバシｯ！と音を立てて受け止めれば、あっという間に相手側に囲まれてしまった。

突然の展開に混乱する僕は、ボールを持ったまま固まりかけるが…

「こっちだ！」

視界の隅でボールを求める藍色の彼を捉えた瞬間、僕の体は既に動いていた。

バスケで絶望する前のように…

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