【黒バス】藍色のバスケ〔C〕【男主】 (ページ6)

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別室に移った一行。

男性、その娘夫婦と会話をしながらミコトは羅一の様子を伺う。

少し離れた場所で顔を赤くしている年下の少女に、気を配りながら会話を成立させている光景を見て内心したり顔をする。

デビュタレント前に羅一の優秀さを己の友人を通して社交界に知らしめようと考えたミコト。

目論見は見事成功。
会話の内容は先程から羅一のことばかり。

ここぞと言わんばかりに羅一と弾んだ会話を見せつけて正解だった。
羅一の教養はとても高い。それを知ったのは講師に就いてからだった。

羅一専用の書斎があると耳にして天音に見せてもらったそこは、千は超えるであろう本で埋められた二十以上の本棚だった。
五つもある外国語辞典は手垢(てあか)で一部変色が激しい。

書斎の机の上には、書きかけのレポートの様なもの。化石資源について書かれていた内容は中学３年の考える域を越えていた。

「(あの統を越えんとする者は何人も見たが、皆が早い段階で挫折していった。)」

十年以上も取り組み続ける者など初めて目にした。
しかもそれが初代に瓜二つの実孫。

「(しくじるなよ。)」

「(当然だ。)」

目が合った瞬間に視線で念を押せば返ってきた肯定の言葉は自信に溢れている。
これほど面白く思った童(わっぱ)など初めてだった。

「(膳立ては余計だったか。)」

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昼過ぎには相手側が帰り、自由時間がもらえた羅一。

帰国は明日の便なので、時間はある。

ずっとニコニコと笑っていたせいか、疲れて表情を隠すのも面倒くさくなっていた。
ホテルに祖母といれば「野外演習だ！」と言って特別(スパルタ)レッスンに突入する可能性が高い。

私服に着替えた羅一は持ち前の行動力でホテルから脱走した。

秋の終わり。11月に突入した日本は少し肌寒く、羅一の黒コートはちょうど良かった。

腰まである長い襟足を黒コートと一緒に風になびかせながら、男でも見蕩れる顔を外気に晒してその辺を散策する。

どれ程歩いたのだろうか。

途中で女子高生に追いかけ回され、パルクールを駆使して逃げた羅一に、最早距離など頭になかった。
無駄に疲れた感じだけが拭えない感覚。

これからどうしようか、と考えた時…

地面にボールをつく音が羅一の耳に届いた。

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