【黒バス】藍色のバスケ〔C〕【男主】 (ページ34)

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「うっひょー。人、人…人ばっかだなぁ…。しかも最前列は舎弟のちびっこどもが占領してる。」

「あそこなら空いてる。」

「お！なかなかいい所じゃねーかタイガ！やりィ！……で、何でそんなにブスくれてんだ？」

Jabberwock VS NBA の試合。

試合会場には多くの人が足を運んでいた。
もちろん、火神と師匠であるアレックスも。

強い人物には食い付きの良い愛弟子の、どこか不満げな顔を見てアレックスは自然に眉をひそめる。

「どうしたんだ、一体。」

「……別に。」

拗ねたような声色。しかし、その瞳の奥の感情を読み取れるのはやはり師匠の特権だろう。

「……この試合が羨ましいのか？」

「…。」

核心を突かれたように視線を逸らす火神に、アレックスは内心「可愛いなぁ〜」と呟く。

「NBAと戦いたいならもっと強くなれ。」

ニヤニヤとだらしない顔で隣りを見れば、何か言いたげな顔をする火神がメガネフレーム越しに見える。

「…あそこに。」

「ん？何だ？」

「あそこに立つチャンスがあっても俺は…───。」

その先の言葉は口パクだった。
「なんて？」と訊いても答えない火神。

アレックスも訊いても意味無いと感じたのか質問を変えた。

「２強には近づいてないだろうなぁ？」

その言葉にドッと冷や汗を流しながら、火神はなるべく平常心で答える。

「…ったりめーだ。」

「ならいい。最近じゃチームで悪さしてるみたいだかんなー。」

やれやれ、と言いたげなアレックスを見て火神は思わず真実を告げたくなる。

自分はJabberwockの初期メン四人のひとりだと。

あのメンバーは自分のことを送り出してくれるいい奴らなんだと。

outlawが、羅一がいたからバスケが更に上手くなったんだと。

父子家庭の自分を本当の家族のように接してくれることを。

……言える訳がなかった。

小3で渡米した自分。その後に知り合った兄弟子と師匠。もう…かれこれ10年は隠している事だ。

2人がJabberwockにいい印象を持っていないのも事実。２強にも「隠せ」と言われた関係。それを明かすのは今ではない気がする。

『俺は…NBAにはいかねぇよ。』

親友を支えるために、彼はその道を歩まないことも。

彼はまだ告げない。

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