【黒バス】藍色のバスケ〔C〕【男主】 (ページ26)

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懐かしい記憶が羅一の脳裏をよぎった。

『母さん。何でヴァイオリンなんだ？』

『？』

『母さんは音楽器全般出来る。絶対音感だってある。芸術全般に秀てるのにどうしてヴァイオリンを弾くの？』

音楽・美術にチートを持った母は何故か舞台にはヴァイオリンしか持たなかった。
ほかの楽器でオファーが来たら、すべて断る。

不思議で仕方なかった──聞いたのは13の頃。

『ヴァイオリンはね、あの人との出会いをくれた特別なものなの。』

『クソ親父と？』

『えぇ。羅一とナッシュくんたちを繋げるバスケみたいなモノね。』

『へぇ。』

『その繋がりを一番感じられるのがヴァイオリンだから、私はそれ以外の楽器は持たないの。』

『…俺に教える時は持ってるくせに。』

『あら、それとこれは話が別よ？』

「親子の場合、師弟関係を繋ぐものか。」

ボソリと呟いた言葉で一度目を閉じてからヴァイオリンを持ち直す。

一足先にナッシュが周りからスペースを確保してくれたので簡単にヴァイオリンを構えられた。

ヴァイオリンを自然に構えた姿に、何人かがほぅ…と感嘆の声を上げた。

5秒ほど経ってから、羅一が弦に当てた弓を力強く引いた。

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「(この曲は…。)」

奏でられる音にミコトは静かに瞠目する。

1830年に作られたベルリオーズの幻想交響曲。
トロンボーンやチューバという低音楽器をふんだんに激しく使った曲。

ヴァイオリンで弾けないことはないが、イマイチのもの。この曲の主役は金管楽器と言っても過言ではない。

「(何故この曲を…──。)」

しばらくして、思考が一変した。

幾重にも重なる音調。ハッとして首を動かせばダンス曲を奏でる音楽団が楽器を段々と構えて羅一の演奏に加わっていった。

彼らの視線の先は羅一。羅一も音楽団に気付いたのか、少しずつ曲調を変えている。両者の間にいる指揮者は、静かに指揮棒を振っていた。

盛り上がり部分で力強く弓を弾いた羅一の後ろに氷の世界が見えた。
目を擦って、もう一度見れば本来の光景。

「(これは…。)」

酷く見覚えのある感覚にミコトは言葉が出なかった。知っているのだ。この感覚を。

「(天音…と、同じ……。)」

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