【黒バス】藍色のバスケ〔C〕【男主】 (ページ12)

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「さて───まだやるか？」

圧倒的な実力者を前に、僕は棒立ちの状態が精一杯だった。
ダンクの余韻で、リングにぶら下がっていた彼は軽やかに地に降り立つ。

首だけをこちらに向けて振り向いたその姿は──赤髪の彼を超える絶対的な存在感を醸し出していた。

「ひ、ヒィィィｯ！」

「スイマセンっしたぁぁぁ！」

「うわぁぁあああ！」

柄の悪い高校生三人組は、その威圧に耐えきれなかったのか悲鳴を上げてストバスから逃げ去った。

未だに動けない僕を横目に、彼は呑気に口元を抑えて欠伸をする。
転がってきたバスケットボールが僕の足に当たったことで、彼がこちらを向いた。

「…お前不思議な奴だな。」

口を開いて出てきた言葉に、僕は首を傾げる。
不思議な奴とは君の事じゃないのか、と一瞬でも思ってしまったから。

そんな僕の心の内を知るはずもない彼。

「動きは凄く目立たないようにしてるし、タップパスなんてタイミングが正確過ぎて驚いた。
パスに特化した選手ならそう言ってくれよ。もっとボール回せばよかった。
そしたら他のシュート試せたのに。」

不満そうに美しい顔を歪ませたと思えば、フッ…と儚い笑みを浮かべて彼は言った。

「ほんと、お前のいるチームと戦ってみたくなった。」

十分程度の短い時間。
僕が出したパスは大体5本弱。それだけでミスディレクションの片鱗に気付いた彼に対して冷や汗が流れた。

更に、僕が言ったのは『パス以外は役に立ちません』。
それを『パスに特化した』と変換した挙句、「もっとボールを回せばよかった」と言う始末。

開いた口が塞がらないとは、こんな感じなのだろうか。

僕は今、───とんでもない人物とバスケをした。
そんな気がしてならない。

あの俊敏性(アジリティ)と身体能力(フィジカル)に加え、圧倒的なバスケットセンスと観察眼。

赤髪と青髪の彼ら二人を足したような実力者を前に、僕は驚きで胸がいっぱいだった。
超越した実力を持つ彼なら、キセキを満足させる試合が可能なのではないかと。

……しかし、それは叶いそうにない。

「チーム、ですか。──…もう、無理ですよ。」

「？」

「……僕は今日を最後に、バスケットボールを辞める。」

僕の言葉に、彼は眼帯に隠れていない片方の瞳を大きく見開いてこちらに向き合った。

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