4話 雨の降り始め ページ4
「……はぁッ……はっ…」
周りを囲っていたヒルチャールの群れを何とか倒しAは肩で息をする。
隣に佇むガイアはいつも通りの余裕そうな面持ちだ。
「おいおい、大丈夫か?」
「……神の目を……はぁ、持たない普通の人間にしてはよくやったって褒めてもいいと……思うんだけど……?」
ガイアに向けた軽口も今のAにとっては精一杯の強がりだ。
度々、こうしてガイアと任務に当たることがあるが、いつ見ても元素とやらを使う戦いに合わせることは慣れそうになかった。
ガイアの攻撃に巻き込まれないようにと其方ばかりに意識してしまい、ヒルチャールの攻撃を受けてしまった。
今回の任務での反省をしつつ、モンド城へ帰る為武器を背負う。ガイアはどうやっているのか剣を軽く振りどこかへしまったようだった。
―――毎度思うけど、あれも元素を使えるからとかなのかしら?……まるで魔法ね。
「……ん?雨が降ってきたな。急いで戻るとするか。」
「え?……本当だ。」
ポツリとまばらに雨が肌に落ちる。
関係ないことを考えていたせいでガイアが言うま雨が降ってきていた事に気付かなかった。
相当疲れているようだ。
頭がズキズキと痛んで来る気がした。
疲労のせいもあるだろうが、もとよりAは雨の日が得意ではなかった。そういう体質なのか雨の降る日は今みたく頭が痛む。
今はまだ軽い頭痛で済んでいるが本格的に降ってくれば痛みは重くなってくる。
そのことを思うだけで段々憂鬱になっていく。
―――今日はとことんツイてないわね……。
思わずこめかみの辺りを抑えながらもモンド城のある方へと足を進める。
「…大丈夫か?」
優しく聞こえた声に顔を上げると声の主はAが思っていたより近くにいた。
ひたりと、ガイアの指がAの額に触れる。
母親が子供の熱を測るためにやるような仕草をするガイアにAは混乱した。
「……は?あ…えぇ、大丈夫です?ちょっと頭が痛んだだけよ。貴方こそどうしたのよ……です?」
思わず、敬語と疑問風に答えてしまい恥ずかしくなる。
しかし仕草は優しげなのにガイアの眼は言動に似合わず冷たい。その差にAは混乱してしまう。
「いや?大事ないならそれでいい。……しかし、お前が敬語なんて初対面の時以来だな」
パッと額から手が離れると同時にガイアの様子はいつも通りの胡散臭く軽薄そうな様子になった。
―――……私、やっぱりこの人が苦手だわ
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作者名:コカゼ ナヅ | 作成日時:2023年7月10日 2時