《テニプリ》私の仕事は監視者です

5話 ページ29

「っわぁぁ！？A先輩！？き、聞こえてたんですか？」


ビックリしている俺とは反対に…まるでイタズラが成功した子供みたいに笑う先輩がいた

いつも大人びていてかっこいいA先輩。そんな先輩がこんな顔もするなんて…意外な一面が分かって少しだけ先輩との距離が縮まった気がする



「もうばっちり。ほら、今日はギャラリーがいるよ。頑張んなきゃね」


そう言って先輩が指した方向には今日俺に凄い、羨ましいと言ってくれた人達がいた



「河村くんって最近A先輩と練習してたんでしょ？ホームランが少なくなって凄いなって思ってたんだ」

「俺も俺も！ホント河村ってすっごいよね！努力の塊って感じ！！」


っ、見てたんだ。こんな落ちこぼれの俺をみんなは見ていた

皆と何処か線があって中々溶け込めないでいた。そう思っていた。だけどそれは自分がただ勝手に線を引いていただけだったんだ







あれから少し先輩と打っていたがどうにも上手くいかない
すると見ていた乾くんが提案をしてきた



「…もっと自信を持ったらどうかな？せっかくこんな強いパワーで打てるんだ。ボールは打った人の性格がでる。自信を持ったらもっと強いボールが打てると思うよ」


自信…？
今までの俺は確かに皆よりも遥かに出来なくて自信なんてものは無かった。今なら、持っていいのだろうか



「自信…分かった。やってみるよ」


やらずに逃げるのは卑怯者と同じだ
そんなのもう嫌だ！

ボールが来た。俺はグリップをギュッと握って構えた

今なら行ける



俺は強くなりたい！！！



「グレイトーーー！！！！！！！！！」



打ったボールは力強く、A先輩のコートに入った



「入った…」



今までと違う。今までのと大違いだ



「っ、やった！！！」


俺は嬉しくてつい、ラケットを離して両腕を上にあげてはしゃいで喜んだ



「やったね！タカさん！！」

「うん！…ってタカさん？」

「いいね！それ！今日から俺もタカさんって呼ぼーっと！」


タカさん…初めてあだ名をつけられた。何だかくすぐったい気もする


ようやく皆と同じスタートラインに立てた…気がする。少し出遅れた俺だけど、みんながすごいと言ってくれたこのパワーで、いつかは全国へ…なんて言うのはちょっとカッコつけすぎたかな



そう思っていたらA先輩が来た

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