《テニプリ》私の仕事は監視者です

2話 ページ26

「答えられない。いや、認めることかできない河村くんにかわって言おうか。みんなよりも読み込みが遅く、ボールを入れることすら出来ない。無個性な自分を見るのが嫌だから退部する、違う？」

「っ！」


どうやら当たったようだ

先輩に迷惑がかかるから、なんてのは言い訳だ。逃げる道を自分で作り自分が如何に傷つかないかを選んでいる



「別に逃げるな、とは言ってないよ。ただ、何もせずに逃げるのは卑怯者と同じってことを言いたいの。
たくさん、たっっくさん努力をしてそれでもダメだったら。それはもう逃げてもいいと思う。だけど君はそれまでそういうことをしたかな？」


そう言いながらAは河村の両腕を優しく掴んだ。そのまま彼の目を見るとさっきまで嘘の色で染まっていた目が今度はうるうると、涙が溜まっていた

もう大丈夫そうだ



「っ俺、皆より出来なくて。でもっ！もっとできるようになりたくて…だけど、どうせ出来ないって気持ちが強くて。だから退部しようとしたんですっ…俺、っ逃げてばっかだ…」


涙を流してしゃっくりまで…河村は忙しくしていた。自分の本当の気持ちに気づけたならいいのか


彼は無意識に逃げていたらしい。人間というものは自分の弱い所を他人に見せたくない、また自分自身も見たくないという本能がある。河村の場合後者だろう

またさっき言っていた"先輩に迷惑をかけたくない"という気持ち、あれも少しの理由に入っていたと思われる


彼は人一倍、人に気を使える優しい子だ。だからこそ、というのもあったのかもしれない



「それに気づけたなら大丈夫。さて、君はこれからどうする？」

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