閑話 居場所 ページ29
夜も深くなる頃、Aはカーテンから出てベット端に座っていた
目の前には沢山のお見舞いの品がおいてある
月明かりだけでは周りが見えず、とりあえずその中から適当な大きさのを1つ取った
「これは…」
どうやら写真立てだったらしく飾られていたのは部員たちが集まっている写真だった
立ち上がって窓側に寄り月明かりを拾った
ようやくはっきり見えた写真
そこの大和の腕は既に包帯で覆われていた。関東大会が終わって少したった頃に撮ったのだろうか
撮る時の位置は特に指定されなかったのか、笑ってピースをしていたり、仲のいい人達で肩を組んでいたりと十人十色の景色が切り取られている
「あ、菊丸くん、大石くんの背中に飛び乗ってる…2人ともちゃんとペアになれたんだ」
「おっタカさんだ。いや、これはバーニングタカさんだな?」
「おぉ…乾くんバーニングに巻き込まれてる…」
「こっちは…ぷっ、あはは!不二くんナイスじゃん」
写真の中で、不二が手塚の後ろに回り込んで口の端を指でグイッと上にあげてにっこりとしていた
手塚ももちろん"にっこり"だった
「あー笑った笑った。ってか、皆大きくなったなぁ…乾くんなんて皆と頭1つ分抜けてるじゃん……あ、もしかしてあれか牛乳の…」
写真1枚でこんなにも思い出が蘇る
もしかしたらこの世界に少し長居しすぎているのかもしれない
自分は監視者。歪みが無くなったら次の世界に飛んでいく。前の世界に未練なんて残してはいけない
でも、少しだけ目を瞑ってほしい
初めての学校生活なんだ。羽目を外させてくれ
こんな気持ち、初めてなんだ
殺しもしない、殺されもしない。仲間が裏切って誰かを突き落としたりなんてしない
幸せに包まれた世界
甘い甘いミルフィーユで何層も包まれたような優しい世界
そんな世界に浸っていた
このあまちゃんが、なんて言われるかもしれない
でも、多分、何処か気づかないうちに自分の心は疲れ果てていたのかもしれない。いや果てていた
あの時、パパに拾われた時から私の仕事は始まった
私は休みなく働いた。そうしなくちゃ自分の生きる意味はないのだから
ありがとうパパ、もう充分甘ったるい世界は堪能しました
これからはちゃんと仕事を全うするよ
私は監視者、世界を安定へ導く者
時に救済者と崇められる時代もあった
そう、使命を忘れるな
自分の生きる意味を間違えてはならない
だけど…
「君たちが恋しいよ」
そんな呟きは夜に溶けていった
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雲雀 - まいさんへ俺は亀更新でも楽しみに待っています。なのでゆっくりでもいいので更新楽しみに待っています。 (2021年9月30日 19時) (レス) @page29 id: 69d630334c (このIDを非表示/違反報告)
まい(プロフ) - 雲雀さん» コメントありがとうございます!亀更新ですがよろしくお願いします。 (2021年9月27日 12時) (レス) id: ed3b470f19 (このIDを非表示/違反報告)
雲雀 - 面白かったです。これからの更新頑張ってください!楽しみにして待っています。 (2021年9月25日 15時) (レス) @page32 id: 69d630334c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まい | 作成日時:2021年5月3日 14時