カーテン越しの面談 ページ26
ピッピッと、心電図の音のみが響く病室には1人の少女がベットに沈んでいた
顔には沢山の湿布、身体には包帯、管があり、夕焼け色の髪もそれらで隠されていて見るからに暑そうだが、起きる気配はない
ふわりとカーテンが揺れ、窓からは夕日が差し込んでくる
アスファルトが焼けた匂いやお日様の匂い、木々の匂いそして、セミの鳴き声
それらも風に乗って運ばれてきた
そんな静かで暖かな部屋の戸がガラリと開かれる
「こんにちは、Aさん」
入ってきたのは私服の大和だった
手には紙袋がある
「じゃーん、今日は向日葵にしてみました。花屋で見た瞬間これだ!ってなって。ほら、元気な感じとかAさんにピッタシじゃないですか」
ふふっと笑いながら紙袋から取り出す
飾るためにいそいそと動いているが、ベットから何も反応はない
大和はそのまま続けた
「しかも残りの本数が7本って言われて…あっ!ラッキーセブンだ!って
Aさん、こういうの結構好きですよね」
そう言い花を7本、花瓶に入れる
夕日にあたる大小様々な向日葵はキラキラと輝いているようにも見えた
少しして、大和は息を吐くとベット沿いにある椅子に座る
その顔は先程の笑顔などはなかった
大和はベットで眠るAの手を取り、ゆっくりと甲を指で撫でている
「ボク達、負けちゃいました。貴方に全国への切符を持っていくと約束したのに
……だから、でしょうか。もう、貴方が目覚めることはないような気がしてならないんです」
ぽろぽろと呟くように、誰にも聞こえないくらい小さな言葉が出てきた
その言葉はおそらく、仲間にも言えず、1人でずっと溜め込んでいたものなのだろう
彼は"かっこいい部長"というレッテルを酷く大事にしていた
そのため唯一のガス抜きがAという存在だった
彼女だけが、自分の弱い部分を知っている。そんなAに縋っていたのだ
「早く、起きてください…ボクはこれから誰に喝入れをしてもらえばいいんですか
貴方がいないのは本当に静かで、世界が変わってしまった気がします」
ピクリともしない体を見てAの手を離す大和
そのままふわりと笑った
「実はボク、関東大会でヘマして腕が酷くなってしまったんです
このまま手術をしても成功は五分五分で、ビハビリも耐えれるかどうか
だから、テニスはやめようと思って…」
「それは聞き捨てならないな!」
大和は驚いて声の先を見ると、カーテンの向こうに誰かが立っていた
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雲雀 - まいさんへ俺は亀更新でも楽しみに待っています。なのでゆっくりでもいいので更新楽しみに待っています。 (2021年9月30日 19時) (レス) @page29 id: 69d630334c (このIDを非表示/違反報告)
まい(プロフ) - 雲雀さん» コメントありがとうございます!亀更新ですがよろしくお願いします。 (2021年9月27日 12時) (レス) id: ed3b470f19 (このIDを非表示/違反報告)
雲雀 - 面白かったです。これからの更新頑張ってください!楽しみにして待っています。 (2021年9月25日 15時) (レス) @page32 id: 69d630334c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まい | 作成日時:2021年5月3日 14時