49 最終回 ページ49
夜風が冷たい日のこと｡
その風はおろした私の髪を攫う｡
「Aちゃん久しぶり」
「久しぶりです｡お母さん」
月島のお母さんは綺麗だ｡
小さい頃の時にも同じことを思ったのを覚えてる｡
(なんか､久しぶりだからか余計綺麗に見える……)
どうでもいいことを考えていると､お母さんが私を見る｡
「?……どうしたんですか?」
「大きくなったって思ったの」
「あー……何年も会ってなかったですもん､しょうがないですよ」
そう言いながら､縁側から見る夜空だけは昔と変わらないままだと思った｡
「また来てもいいですか?
いつ会えるか分かりませんが……」
「もちろんよ｡何年も待つよ」
優しく笑うお母さん｡
その時､この笑顔を見て思う｡
(これ蛍そっくりだ……稀しか見れないけど)
「何やってんの」
お母さんはもう行ってしまい､今度は後ろから月島が私に声をかける｡そしてそのまま隣に座る｡
「お母さんと話してたの｡久しぶりだったから嬉しかった」
「ふーん」
「お兄さんにはいつ会わせてくれるの?」
「別に会えばいいじゃん」
その態度が少し可愛く､私は笑ってしまう｡
会わせてくれないのは彼なのに｡
(まぁ､別で少しだけ話したんだけど)
「A､これ母さんから」
「これなに?」
渡された幾つものお花が付いたイヤリングは片方のみ｡
少しだけ見覚えがある｡
「Aのお姉さんが母さんに渡したらしい
頼まれたって言ってた」
「頼ま……れた?」
その言葉に私の頭が反応する｡
実は応援について話したあの時には続きがあった｡
私はそれを気に止めていなかった｡＿＿
『えぇー!!』
『私は信じてる｡高校生になったら､全て分かるって｡
そしたら､運命がキラキラに輝いてる未来に変わることも｡
その時にはAの元へ帰ってくるよ』
『お姉ちゃん､居なくなるの?』
『んー分からないけど､勘だよ』
私の元へ帰ってくる時はこの片方のイヤリングが手元に帰ってくる時｡
そう言っていたのを思い出す｡
お姉ちゃんはすごい人だ､こうなることを知っていたから｡
そう思ったらいつかのように涙が溢れる｡
「……帰ってきた私の元に｡」
私は月島の胸板を求めるようにくっつくと､月島は黙って貸してくれた｡
片方はやっと相手を見つけ､もう二度と離れない｡
それは姉と私であり
蛍と私だ｡
夜に浮かぶ月は左薬指のリングを光らせた｡
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作者名：ユーナ | 作者ホームページ：yuna187.tobio912-8h1i9q@docomo.ne.jp
作成日時：2016年5月10日 1時
