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夕日に照らされた建物を見て､今更夕方なのだと感じる｡
「……最後って言ってたけど」
私の耳に届く声で右隣に座る月島が話す｡
私は､腕の中にある中ぐらいの人形に少しだけ力を入れる｡
「寂しいって思ってくれてるの?」
「違うから」
月島に尋ねると窓を見たままでこっちを見てくれない｡
顔を合わせないので､人形を見つめる｡
ボーッとしている顔なのにどこか悲しそうな顔に見える｡
(もし､今日で最後ならもう関われないのかな｡
ゲームの条件なら……そうだよね)
朝の時の緊張が蘇り震え出す｡
それをつかさず逆の手で抑える｡
何故か話題を変えたくなって人形を見る｡
「そういえばこの人形､高いよね」
「買ってもらっといて聞く?」
「もらったとは違うけど……でもこの子､最後かもしれない思い出として大事にする」
ガタンっとバスが揺れるが何も無い｡
ただ2人の間には沈黙が流れただけだった｡
＿＿＿＿
「送ってくれるの?」
「送るじゃないから」
しかし､私の家までついてきてくれるのはどう考えても送っている他ない｡
「優しいね」
「なんで」
「蛍だから?」
「回答になってない」
分かっていたかのような返しに笑う｡
このまま家に着かなければいいのにそう思ってしまうほど､この時間が楽しい｡
最後なんて言わなければよかったのかと思うけど､こうやって自分自身にけじめをつけなければいけないのを思って自分で決めたのだ｡
そうこう考えているうちにいつの間にか家に着いていた｡
「僕帰るから」
そう一言､言うと月島は行ってしまう｡
私は振り返った｡
そして､一歩足を動かす､けどもう一歩が出ない｡
まるで地面について離れないように｡
(言わないと……最後って決めたじゃん)
「け､い……」
やっと出た声は微かで彼の耳には届かない｡
私は掌に爪のあとができるほどに力を込める｡
「蛍!!」
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作者名：ユーナ | 作者ホームページ：yuna187.tobio912-8h1i9q@docomo.ne.jp
作成日時：2016年5月10日 1時
