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「今日は何処?」
「たまには君が決めればいいじゃん」
「いいの!?」
「駄目なんて言った覚えない。」
(思えばそうだ……)
少し考えたのち、私は両手をパンッとたたく。
「月島家!!」
「却下」
「即答!?決めていいくせに。」
口を尖らせて月島を見つめる。
でも、月島はケロッとしたように返す。
「全てがいいとは言ってない」
「うーん……じゃあいつも通り私の家でね」
結局いつもと同じ場所で変わりがないことが嬉しくて胸から溢れる笑みを向ける。
「蛍、部活頑張ってね」
月島に向けて手を降るとお互い目が合う。
しかし、すぐに逸らされてしまう。
「っ……」
その瞬間、胸が痛く締め付けられた。
今まで目があっても逸らされることなんてなかった。
それが今では逸らされる。
この事実が酷く切れ裂かれるような感覚になるなんて思いもしなくて。
「ぁ……だめだ」
ポタ__
落ちた雫が古びた廊下に留まる。
私は頬に伝うそれを掌で拭って上を見上げる。
「ダメだ……だめだ、よ………泣いちゃだめだ。」
お姉ちゃんにも誰にも言わなかったことを唱えるように必死に口に出す。
鼻にツーンとする何かを感じて両手で押さえる。
「……行かないと」
幾度か瞬きを繰り返して溢れる涙を止める。
でもまた落とさないように早足で美術室に向かった。
「準備しておいたよー」
「ありがとう」
(そうだ、私が調子にノッてただけだ。それだけ、だ)
「A?」
俯いていた顔を覗くように友達が私を見る。
「ん?どうした?」
「こっちが気になるよ大丈夫?」
「う、うん」
顔をあげて何もなかったように言った。
ふと、視線を自分のキャンバスを見つめる。
そこにはまだ色がのられてない一つの目が描かれていた。
その横に暖色系が並べられていたペーパーパレットがある。
私はそれらを無視するようにベリッと剥がす。
そして真反対の系統の色をつけ、筆をキャンバスの目に当ててゆく。
「あー!雨降ってる!!」
「うそ!!」
他の仲間が窓際で騒いでるのを見て雨が降っているのに気づく。
それはまるで今の私の雲のようなこの感情を表しているようだった。
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作者名:ユーナ | 作者ホームページ:yuna187.tobio912-8h1i9q@docomo.ne.jp
作成日時:2016年5月10日 1時