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「今日はお昼になる前に渡そう｡」
この日は月島くんのクラスは移動なので､お昼に渡せるかわからない｡
だから､朝に渡そうと早速教室へ｡
「ねぇ､聞いたー?」
「なにを?」
「月島くんの話」
廊下で話す女子の声で､クラスへ向かおうとする脚がピタッと止まる｡
(月島くんの話?悪い噂じゃないよね?)
そう､信じる反面何かあったのかと半信半疑で耳を傾ける｡
「あー｡最近女の子が付きまとってるってやつ?」
「そうそう｡」
「でも､月島くんから真相を聞いた子からだと､月島くんに了承をもらってるみたいだよ｡」
「え｡まじ?」
その言葉に心臓がドクンと嫌な音をたてる｡
(私のことだ｡やっぱり､目､付けられるよね｡)
こうなると頭では解っていたはずなのに､いざとなると足がすくんで怖気づいてしまう｡
それでも､月島の所へ行きたくて重たい足を思いっきり踏み出して走った｡
「はぁ､はぁ……っどうしよう｡」
腕の中には弁当箱がまだある｡
立ち止まって息を整えた｡
目の前にはまだ人がいない､月島のクラス｡
あと一歩､歩き出せば後は月島の机に向かうだけなのに先ほどのように､踏み出せない｡
『最近女の子が付きまとってるってやつ?』
『え｡まじ?』
目の前の空間を見つめると､あの女子の会話が頭を過る｡
「…っ私は振り返らないって決めたんだ｡
もちろん､振り返る必要がある時だって＿＿｡」
昔､ある人と決めた約束を声に変える｡
でも､次に放った声は今の自分に当ててるものでもある｡
あの瞬間と今日の出来事が脳裏に浮かび､自分に当てたものだと再確認した｡
私は踏み出して､机の上に弁当箱を素早く置いた｡
「月島くん､ごめんなさい｡」
そして､"振り返るべき瞬間"に立ち会った今､私は一言残してもう来ることがないであろう､この空間から出て行った｡
あの瞬間や今日の出来事を振り切るように思いっきり廊下を走った｡
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作者名：ユーナ | 作者ホームページ：yuna187.tobio912-8h1i9q@docomo.ne.jp
作成日時：2016年5月10日 1時
