1話 ページ2
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これは、俺が夜の森を散歩していた時の話。
静かな森の中には風の音や、木々の葉が揺れる音が響いている。
そのままフラフラと歩いていると、ドサッと何かが倒れる音がした。
その方を見ると、小さな子供の影があった。
こんな時間の森に子供が…?と気になり、子供に近づいていくと黒髪の少年の姿が明らかになった。
その少年は俺を見てかすかに怯えており、地面に座り込んでこちらを見ている。
「少年。こんな時間に何してるんだい?危ないから家に帰りな。」
少年「…家はない。」
「ほう、親は?」
少年「………死んじゃった。事故だって。」
「事故か。それは気の毒に。」
だが、それはそれで疑問だ。
親が死んだとはいえ、こんな子供を野放しにするか?
施設か親戚に預けられると思うが。
「なあ少年。ここに来る前、何をしていたのかな?」
少年「施設に行ってた。でも、追い出されて…ここに来た。」
「なるほど。なぜ追い出された?」
少年は、施設の職員たちの子供たちに対する本音を暴露してしまい、気持ち悪いと言われ追い出されたと言った。
言い終わったあと、少年は膝を強く抱え、どこか苦しそうな顔をした。
その様に、かつての自分の姿を重ねながら、少年の前にしゃがんで目線を合わせた。
「少年、俺と来るかい?」
少年「え…お兄さんと?」
「(お兄さんじゃないが)そう。」
少年はしばらく驚いた顔をしていたが、ハッとして俺から目を逸らした。
少年「嫌だよ。知らない大人に着いて行ったら行けないって、いつも母上が言ってたし。」
「俺も、困っている人がいたら助けろといつも言われてたけど?」
少年「べっ、別に困ってない!」
「ほう…そうか。それは悪かった。」
少年「へ…?」
しゃがむのをやめて立ち上がり、少年を上から見下ろした。
まあ、顔は布で見えないだろうけど。
「困ってないのなら俺は帰るよ。ここら辺は人は来ないし迷いやすいし、凶暴な野生動物も出る。毒を持つ植物もあるから、気をつけるんだな。」
俺の言葉を聞いていた少年は、だんだん顔を青くし、冷や汗を流していた。
じゃあなと言って立ち上がると、少年が俺の服を掴んだ。
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作者名:七瀬 | 作成日時:2023年3月26日 2時