今日も社畜は探偵社で叫ぶ

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茶色の帽子。それに似合う同じ茶色の探偵マント。いつも糸目の彼。
自由翻弄、常にマイペースの彼。駄菓子を常に、持ち歩いている。

彼の名は、名探偵江戸川乱歩。

望月や小泉のいざこざに余り興味を示さなかった乱歩が発言したことで場は驚きに近い静寂に包まれた。

そんな周囲の様子など目にもとまっていないとでも言うように、机に載せた足を下ろし机から立ち上がり、望月愛里咲の方に近付く乱歩。

「だって、君は”左”の肩を小泉に押されたんでしょ？
其れなら右側に傷が出来るのが自然。だって、押されて一回転する暇なんて物があったら例えぶつかっても痣何て出来ないしね。」

そこまで一旦口にして、乱歩は望月が見せている痣を指差した。
ビシッ、とでも効果音がつきそうなその指差し方は別に当然だとでも言わんばかりだ。

「しかし！君の腕についた痣は左側だ。”左肩を押されて””左腕に痣がつく”なんて、可笑しいとは思わないのかい？」
「〜〜！」

乱歩はそこまで言い切ると異能力を使うまでもないねこんなこと、と言いながら再び椅子に足を上げて座り、腕を組んで天井を見上げ始めた。

言葉が終わったと同時に、社員達は少なからずざわめく。乱歩さんの言葉だ。間違っているとは思えない。しかし、愛里咲が嘘をつくだろうか？

「…………グスッ、だってAちゃんがあっ…」
「嗚呼、それと。愛里咲はお酒が入ってそうだから其れが何かの原因なのかもね。与謝野さんに診てもらったら？」

特にタイミングは考えていなかったが、たまたま愛里咲の弁明如きと重なった乱歩の発言に、与謝野晶子は動いた。
望月は医務室に連れて行かれ当事者がいなくなったその場は終わった。
そして残された社員達は望月の発言と乱歩の発言について考えさせられる事になるのだった。

これが、昨日の話だ。






「はあ………」

社長室を出た。
口から自然と出る溜息は幸福を逃がすと言うが、そんな簡単に出ていく幸福だなんてあってもなくても変わらないだろ、と言うのがAの考えだった。
肩と首からゴキゴキと骨の軋む音が聞こえて、そろそろ年かな、とでも思うようになってしまった。
まだ21才なのだけど。

「A〜」
「……！聡司！久し振り」

三日月。
少しだけ月が太陽に反射して、黄色くなる日。そして、この幽霊の活動源。
赤目をニヒッ、と細めて笑う姿は美形なだけなかなか絵になる。
唐突にそう思った。

＿＿
うら◯ちさん読みました
社畜の心が少し分かったような気がします笑

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