【短編集】少しの幸せを貴方に【2j3j】 (ページ45)

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「景くん？どうしたの。なんで泣いてるの？」

いくら近くによって顔を覗き込んでも視線は交わらない

彼も私のことが見えていないのか

ガチャっと音がして部屋の扉が開く

入ってきたのは私の母で、彼女の目線は私ではなく景くんを見ていた

ここに娘がいるのに、どうして

「長尾くん、昨日から何も口にしていないでしょう。これ、良かったら」

「……ありがとうございます」

「そろそろお別れしないといけないわ」

お別れ？誰とお別れするんだろうか

もしかして景くんと？なんで？？？引っ越すの？

「ねえ、お母さ、、、ん」

目の前に立った私の姿が全く見えてないとでも言うようにドアを静かに締め、階段を降りていく音が聞こえる

本当に、見えてないんだ

そっか、私、昨日─────

特別なことなんてない、よく晴れた日だった

景くんとのデートの帰り道、人通りがそこそこ多い通りの横断歩道を渡っていた

信号は青色に光っていて、それは歩行者が渡ることを許されたタイミング

逆に言えば車は止まることを命じられた瞬間だ

でもそれは例外もあって、同じ方向の信号は車も歩行者も青になる

歩行者天国ではないから

まあ、それで曲がってきた車に轢かれちゃったんだね

それなりに負傷者も多かったんじゃないかな

景くんは普段から運動してるから受身をとって無事だったみたい

良かった。たくさんの人から愛されている人だから

骨になっても愛してくれるといいなって思うけど、早く新しい人見つけてねっても思う

わがままでごめん

だから、だから、君の前に姿表そうかなって

いつも寝ていたベッドに座って涙を流し続けている彼の頭を撫でる

『泣かないで、そばにいるから』

頭に乗った重さと、妙に凹んたベッドに気づいたかな

この言葉が届いていればいいけど

そんなに簡単に神様は機会をくれない

この世にいられるのはきっとあと48日間

君を忘れないように、来世でもまた会えるように

私の母に呼ばれて濡れた目を擦り部屋を出ていく景くん

その姿を追うことはしなかった

「絶対そばにいろよ」

誰もいない部屋に呟かれた言葉はきっと、神様だけが知っている

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こんばんは。めろんぱんです。
1作前の夢追の短編にnewの文字があると思うのですが占ツクのバグです。内容は何も変わっていません。
いつ治るか分からないので余分な更新通知いってしまったらすみません🙇‍♀️