【短編集】少しの幸せを貴方に【2j3j】 (ページ39)

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49日 ‐ gnzk ページ39

※ある企画で掲載したものです。該当作品は今ありません

どんよりと厚くなった鼠色の雲と激しく揺れる木々が見える。高い位置にある窓からは遠くの様子しか見えなかった

強く打ちつける雨の音
車が勢いよく水溜まりを走り抜ける音

たくさんの音が響いている

室内であるにも関わらず、否、室内であるからこそよく聞こえるのかもしれない

屋上に続くこの階段は毎日の私の居場所だ

薄暗くて少し埃っぽいこの場所に好んで居座っているわけではないけど、教室に居場所がないんだから仕方ないんだよね

私が座っていた机には花が置かれている

階段の電気は1階からここまで1つのスイッチで点灯するからここだけ不自然に明るくなることはない。わざわざ出入りが禁止されている屋上に来る人もいない

だから私がここにいることに気づく人は誰もいない

そもそも、私の存在に気づく人が少ないからそりゃそうなんだけど

1人でゆっくり時間を過ごそうと思っていたのに、1人だけ、1人だけ私のことを見つけてくれた人がいた

多分今日も来てくれる

でも大雨で電車が止まるかもしれないからって今日は部活動が全てなくなった。だから学校にいるのは先生とよっぽどの用事がある人

彼の家は知らないけど、近くはないことは確か

私から会いに行くことができないのが悔しいよね

彼が気味悪がられるのは嫌だから

寂しくないって言ったら嘘になるけど、生きていれば何かしらあるんだから仕方ないと前向きに考える

雨が止む気配はない。寧ろ少し強くなっているような気もする

お母さん、仕事終わりに迎えに来てくれたりするかな。来なくていいんだよって伝えた方がいいかな。多分先生たちも今日は早く帰る。

そろそろ私も行かないといけないや。今日は会えないのかな

あと3日しかないのに

立ち上がろうとした時頭の上から声が聞こえた

「あ、やっぱりいた」

遅れてごめんって呟く目の前にいる人。珍しく眼鏡をかけてる

「まだ学校にいたの？早く帰りなよ雨やばいよ？」

「来るの待ってた癖に」

綺麗な顔がニヤッと笑う

どうも私はその顔に弱いらしい

「藤士郎の眼鏡めずらしいね」

「まあね、何してたか知りたい？」

その揶揄うような口調はどうにかならないものか

別に簡単に想像できるから聞かなくていいもんね

「想像できるから別に〜」

「ノリ悪いと嫌われるよー」

「今更だわ」

そう、ほんとに今更。もう遅い

私がここにいるということはそういうことなんだよ藤士郎。わかってるでしょ。