【短編集】少しの幸せを貴方に【2j3j】 (ページ36)

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「ん〜、そうかもね。ういはちゃんは特に」

「えー？そんなことないよ。Aちゃんも十分はしゃいでましたー」

夏の思い出に浸るように会話が続く

昔話は一度話し出したら止まらない

こんなこともあったよねと普段の私たちからは考えられないくらい盛り上がった

きっと傍から見たらとても仲の良い2人に見えていたんじゃないかなって思えるほどに

「私達も、花火やりにいこ」

「うん」

最初、林檎飴を買った時に離されてしまってからずっと離れていた手を私から握る

ういはちゃんが立ち上がった時、何故かとても寂しい気持ちになったから

一瞬驚いたような表情をしてふわりと笑った

その笑顔は、今まで見たことがなかった

心底愛しいと思っているものを見る目

それが私に向けられている

でも、勇気が出ない私はここでもそれに気づかないフリをする

「全然火つかない！」

「せーのでやるよ！？」

「えー待って待って」

ぱちぱちと音を立てて火花を散らしている

騒がしかった私達も、日がつけばただじっと同じものを見つめる

先に落ちたのは私のオレンジだった

切なく揺れるオレンジは闇に溶けて簡単にいなくなる

好きの気持ちも簡単に溶けてしまえばいいのに

「綺麗、だね」

ういはちゃんのそれも落ちてしまって、2人ともただの紐しか持っていないのに綺麗だと今もオレンジが続いているかのように呟く

「綺麗だったね」

わざと、過去形にした

これ以上深くこの気持ちに入り込みたくなかったから、自分で自分に蓋をする

だって、これがずっと続くわけない

線香花火のように、直ぐになくなってしまうことはよく分かっているから

「ねえA？来年も来ようね」

「もちろん」

「これからも親友でいてね」

ういはちゃんからの2つ目の言葉に肯定も否定もせず立ち上がる

彼女は私の手を握ることはしなかった

それが、私たちの最善なんだと思い込ませて