【短編集】少しの幸せを貴方に【2j3j】 (ページ34)

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線香花火 ‐ uih ページ34

「Aちゃーん！ごめんね。お待たせしました！」

「んーん。全然待ってないよ」

ういはちゃんに会うのは3日ぶり

そんな今日は梅雨の時期とは思えないほどの雲ひとつない晴天で、肌がジリジリと焼かれるようだ

昨日まで激しい雨が降り続き、暗い闇が世界を包んでいたと言うのに

いつかと同じやり取りを交し隣に並ぶ

学校とは違った雰囲気のういはちゃんは更に笑顔が可愛く見えた

「よしっ！行こー！！」

自然に私の手を取り繋ぐ

まるで恋人のようなその繋ぎ方にびっくりして、だけどそれが嬉しくて

仲のいい女の子同士ならみんなやっているだろうその行為に、慣れていない私は平然を保つことができているのだろうか

「わぁ、結構人いるね」

「まだ早い時間なのにね」

「紫陽花見るにはこのくらいがちょうどいいのかな〜？」

ぼちぼち屋台が出始めるそんな時間

開始時間なんてものはなくて各々好きに始めて好きに帰る

金魚すくいやたこ焼き、わたあめなど王道中の王道中屋台が準備を始めていた

すれ違う男性は振り返ってまで、浴衣を着て紅い現代風の簪をつけたういはちゃんのことをもう一度瞳に写そうとする

紅い簪は彼女の髪色によく映える

夏らしい赤地に青い朝顔があしらわれた浴衣を着て、下駄をカランカランと鳴らしながら歩く姿は品があって綺麗

咲き誇る紫陽花も相まってとても美しいと思えた

幾分か早い地域の夏祭り

この地域では1番大きい山にある神社で梅雨の時期に紫陽花の開花と共に開催される

真夏のような花火は上がらないけれど、線香花火などの手持ち花火を子供たちに無料で配布していて、高校生もそれの対象だ

昨日までの雨のせいで少しじめっとした空気が漂う中、隣に立つういはちゃんはそれを吹き飛ばしてしまえそうな明るく元気な笑顔が咲いていた

「んー、まだ屋台も少ないね……」

「少し早すぎちゃったかな？」

集合時間の30分前に着いてしまった私、そしてその15分後には来たういはちゃん、つまり想定よりも15分早い

そんなたった15分でと思うかもしれないけど、あと20分もあれば屋台はものが買えるくらいにはなるだろうし、花火も配られ始めるだろう

いつかのように告白されて時間に遅れて来るんじゃないかと思っていた私は早めに合流した時のことについては何も考えていなかった