【短編集】少しの幸せを貴方に【2j3j】 (ページ27)

今日:37 hit、昨日:62 hit、合計:174,788 hit

入学式 ‐ kzh ページ27

.

「あ、葛葉も一緒だ」

入試を無事に終えいよいよ入学式

昇降口に貼られたクラス割りの紙を左上から順に探すのは自分の名前とずっとずっと片想いしている彼の名前

誰にも打ち明けたことのないこの想いは鎮まるばかりか年々重さが増している気がする

「葛葉一緒なの？大変じゃんね」

隣で一緒にそれを見ていた幼馴染みが私のつぶやきに反応する

問題児という訳ではないけど授業で寝ていたり課題をやってこなかったりとそこそこやらかしている人

多分彼女はそのことを言っているんだと思う

同じクラス、素直に喜んでいいものなのか分からなかった

だって、同じクラスになったら毎日顔を合わせるし好きになるばかりな気がするから

「あ、私たち4組だわ」

「え、まじー？Aだけ別？」

幼稚園の頃から幼馴染3人組として小学校でも中学校でも周りの友達からはセットで見られてきた

だからといって今までずっと同じクラスという訳ではもちろんない。だから今年こそは3人で同じクラスがいいねなんて話していた

他の2人は同じクラスらしく、私だけ別

中学の友達がそのクラスに２,３人いれば良いくらいの学校だから、葛葉くん以外に同中の子がいるとしてもその子が仲のいい子かどうかは分からない

寂しさを感じながらも新しい友達ができることにワクワクしていた

まだ全然覚えていない校舎をキョロキョロと見渡しながら階段を登り、教室に入る

じゃあね〜と手を振りながら幼馴染2人は廊下のもっと先に進んでいってしまった

なんとも悲しいことに出席番号の関係で1番後ろの席。しかも左右は男子。

前の席の女の子に話しかけたいけどその子は既に隣の子と仲良くなっているみたいで、全然会話に入れない

ひとり俯きながら、担任の先生が教室に入ってくるまで周りの話に聞き耳を立てていた。