【短編集】少しの幸せを貴方に【2j3j】 (ページ20)

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「ねぇ、」

「はっ、はい！」

「昨日もここにいましたよね？」

「はい。あの、、、すみませんでした」

懲りずに不審者の如く道路から剣道場を見ていると、いつも見ている人が隣にいた

なんで制服を着て竹刀を持って鞄を持って普通に登校してるのか

今日は朝練がない日なのだろうか

好きだと自覚してから急に縮まる彼との距離

でも多分、もう毎朝の恒例行事はなくなるだろう

無断で勝手に見ていたことをちゃんと謝ったのに、彼は声を発さずただ私を見ていた

「本当にすみません。実は春の終わり頃からずっと見てて、あの、写真とかは撮っていないので。許していただけませんか」

特に何も言われてないけど口が勝手に動く
せめて嫌われたくなくて、

一目惚れの相手だから叶うはずなんてないのに、

「んふふ、知ってましたよ。貴方が毎朝ここに来てること」

「えっ、」

「その制服、近くの共学のとこですよね。可愛い子いっぱいで」

「いや、あのぉ、怒らないんですか？」

「何にですか？」

いや何にって、勝手に見てたし、昨日逃げたし…
あれ？もしかしてそんなに悪いことしてない？

「めちゃくちゃ困った顔してますね。」

なんて笑いながら言われると気に食わない
困った顔にさせたのは誰ですか

「いつも朝練は来るのに部活の時はみてもいないんですよ。どんな人なのかなって気になっちゃったんですよね〜」

「え、いや、」

「あ、僕剣持刀也といいます。2年です」

「あ、えと、西澤Aです。1年、です」

「じゃあ、僕は朝練があるので。」

「あ、は、はい」

えっと、なんだったんだろう

なんで話しかけてくれたんだろう

これからもここに来ていいって事なのかな？

けんもちとうやさん。剣道部って感じのお名前。

漢字は知らないけど

というか、顔ちゃんと見て声聞いたらもっと好き、なんですけど…

めちゃくちゃかっこよかった。彼女になりたいな

彼女もういそうだけどね。

今気づいた、遅刻ギリギリだ

走って学校に向かう。近くてよかった。

教室に入ると友達にまた見てたのー？なんてからかわれるけど、今日はちゃんと収穫があるから

お昼休みには自慢げに話してやろうと思う

席について一息つく

あの扉が閉まる前に、もう1回、1回だけでいいからけんもちさんに会いたい

よく晴れた空の下、窓の外から見える大樹が最後の1枚を風に乗せて旅立たせていた

初恋、実らせられるように頑張りたいです