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昇降口を出て駅への道を歩く
沈黙が苦手な私はどうにか話題を振りたいと思って頭を回転させるけど、どれも彼女には合わないような話ばかり
「ねえAちゃん、今度の日曜日空いてる？遊びに行きたいな〜なんて思ってるんだけど、ど〜かな？」
「2人で？」
「当たり前じゃん！久しぶりにデートど〜ですか！」
強い雨音にも負けないハキハキとしたういはちゃんの声はよく通る
私の声はちゃんと聞こえているのだろうか
ふたつ返事で了承し、そこからまた沈黙となった
久しぶりのういはちゃんとの2人でのデート。楽しみで仕方ないけど顔に出ないように気をつける。
ふと彼女の方に目をやると少しだけ表情が曇っているように見えた
「ういはちゃん？何か私変なこと言ったかな。」
空に広がる分厚い濃い灰色のせいなのかもしれないけど
「Aちゃん、私の事好き？1番？」
「当たり前でしょ。好きだよ。1番だよ。」
「うん。それならいーや。なんかごめんね！」
"恋愛的な意味で"なんて言葉は出てこない
出させない困らせるだけなのは知っているから
「高校入ってから全然遊んでないし、そろそろAちゃん不足なんです私」
「いいよ、あそぼ？」
「やったぁ！！」
分かりやすく素直に明るくなった顔色は日曜日の予定を立てようと小さい口を一生懸命に動かしている
雨風によって方が濡れても、前髪が崩れても気にしない
可愛らしい格好でいなくても居心地のいいこの場所は絶対他の子に譲りたくない
私ね、雨の日が好きなの
どんなこと言っても全て洗い流せるでしょ
だから思ってないことも言えちゃうの
本音も冗談で済ませちゃうの
駅も見えてきた時、ふと呟かれた言葉。私はその言葉の意味がわからなかった
もうすぐこの狭い折り畳み傘の中から開放される
でもなぜだか遠回りをして歩きたかった
「私ね、Aちゃんのこと大好きなんだよ。誰よりも」
─だからね、いつまでAちゃんが私の隣を歩いてくれるんだろうっ考えて不安になっちゃった
普段の彼女からは想像できないくらいネガティブな話。時々こうなる彼女を知ってるのは多分私だけ
でも私に対してそう思ってるなんて知らなかった
返事をしてしまってはこの関係が変わる気がして、"好き"だけど付き合いたいは違う気がして、小さく呟かれたそれを雨のせいにして
「え、ごめん聞こえなかった。なんて？」
そう言って傘を閉じる
私は臆病だから、聞こえないふりをした
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作者名：めろんぱん | 作成日時：2021年12月14日 23時
