【2j3j】平行線上の想い【合作】 (ページ6)

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ⅰ 躊躇いが仇となるページ6

過去か未来かどちらかに行けるとしたらどっちを選ぶと聞かれたら、今の俺は迷わず過去と答えるだろう。

いつものように駅まで一緒に帰る。これももう当たり前となっていた。1年の頃は『一緒に帰ろう』と毎日約束をしていたけれど、3年にもなれば約束なんてなくとも、"Aからは今どこ！早くー！"とメッセージが来るようになった。一緒に帰らない方がおかしいという程に、あいつの隣は俺の居場所だった。

受験生だからと増やされた夏期講習の日程書と睨めっこをしながら堤防の上を歩く。時折吹く風に乗って潮風や船の汽笛の音を感じる。

「ふしみー」

「ん？」

「話したいことある」

「俺もあるよ。」

3年間一緒に下校しているというのに呼び方は変わらず名字で。俺はA と名前呼び捨てにしているのに、A は俺を伏見と呼ぶ。なんど名前で呼べと言っても変える気はないらしい。

「じゃあ私から話すね」

沈黙が続く、無理に話をしようとしないのが俺たちだ。元気よく遊ぶ子供たちの声が潮風と混ざりあって運ばれる。

「私来週から一緒に帰れなそう」

間を開けて発せられた声の主は、困ったように眉を下げ笑っている。来週は夏休み入ってるんだから当たり前じゃん、俺も無理だよといつも通り明るく返すも、A の周りの空気はA の頭の上にだけ分厚い雲がかかっているかのように、ジリジリと地面を焦がすような太陽の光が反射してキラキラと光る海面と反するように、A の周りの空気は暗く、冷たかった。

「えっと、まさかとは思うけどそれからずっとではないよな？」

「ずっとだよ」

「なんで？」

「引っ越すの」

受験期真っ盛りの高校三年生の夏に引っ越す。それは進路にも大きく影響を及ぼすし、何より俺らの仲がこれ以上深まることがないことを示唆していた。