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＿丁度その時、
｢…っ｣
チャイムが鳴った。
何事も無かったかのように黛君の手が戻っていく。少しだけ、いや大分、残念だと思った。
｢んじゃあ俺は席に戻りますわ！｣
ヒラヒラと手を振りながら去っていく不破くん。彼に手を振り返しながら黛君を見やると、いつも通りの読めない表情の彼が疑問符を垂らした。
｢前向きなよ。先生だってきたし。｣
｢…う、うん。｣
…期待したのに。
溜息を吐いて前を向いた私に、黛君が微笑んだ気がした。
チャイムが鳴り、少し残念そうな顔をして前を向くAに頬が緩む。こういう考えてる事が顔に出やすい所、分かりやすくて心底可愛い。
数学教師の退屈な授業が始まったものの、俺の脳内は彼女の事でいっぱいだ。日曜日に買ってたワンピース似合ってたとか、今日寝坊しかけて朝ご飯抜いてたけど大丈夫かなとか、俺の事好きなのバレバレすぎるでしょとか。
本当、早く俺の物にしたい。彼女は純粋で騙されやすいから、俺が傍に居て護らないと。
さっきだってヒヤヒヤした。余りにも不破くんがAを自然に褒めるものだから、彼女の前だというのに牽制しすぎてしまった。幸い鈍感なAは気付いてなかったけど。
隣のAに気づかれない程度の溜息を吐く。そろそろ本格的に動き始めないと、先を越されるかもしれない。A、今週末空いてた筈だよね。不破くん＿＿まあ彼だけじゃあ無いけれど＿＿よりも先に、彼女の彼氏にならないと。そうしないと、俺は。
ギュ、と机上に放り出した拳を握る。彼女は俺の、唯一の光なんだから。
｢A 、今週空いてる？｣
｢え？今週？……日曜日なら、空いてるけど。｣
｢良かった。じゃあ二人でどっか行かない？｣
｢え？！いいの！じゃあ本買いに行きたい！｣
｢本ね。この間読んでたの、もう読み終わったの？｣
｢うん！｣
｢そうなんだ。｣
……まあ、全部知ってるけど。
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作者名：めろんぱん/みそ漬けキュウリで殴る/翠霞/乃亜/ししゃも | 作成日時：2022年8月12日 20時
