地雷 ページ8
俺は4ヶ月という長い時間休暇を取った。勿論その間何も考えていなかったわけではなく、一日足りとも忘れたことの無い怒りと虚しさと戦っていた。
毎朝の日課は藤の花を眺めることや体が鈍らないように走ること、剣を振ること、全集中常中を忘れないこと、だ。
たまに心の奥から嫌な感情が唐突に出てきて、無惨を八つ裂きにしてやりたくて誤って自分の体を傷付けてしまうこともあった。
それでも俺が正常で居られたのは、胡蝶しのぶ。そう、カナエちゃんの妹。しのぶちゃんに助けられたからだ。
❀ʚïɞ
「また貴方ですか…馬鹿につける薬はありませんよ」
そう言って俺の腕に包帯を丁寧に巻いていく。毎度小言は言われるがなんだかんだと優しい子だ。
「しのぶちゃんの薬はよく効くねぇ。この館の子達は気も利くし、ここに居候したいくらいだよ」
あははと笑うとしのぶちゃんも笑い返してくれた。来る度塩を振られるが今日は機嫌がいいのかな。
「冗談は顔だけにしてください」とニコリと笑い包帯をギュッと締める。機嫌がいいわけではなかったらしい。これには思わず「うぐ」と声が出る。
「冗談は顔だけって、酷いなぁ。
ところで最近毒の研究してるんだってね。はかどってる?」
「ええ、まあ」
クルリと机に椅子を方向転換させ、何かスラスラと書いている。いつもなら笑顔で帰れオーラを出されるのに今日は薬も出してくれるらしい。
「毒、か。いいね。凄いね。
俺はそんなこと考えもしなかった。あ、でも考えられたとしても実行できなかっただろうな。」
そっち方面の知識は全くないし、飽きっぽい性格のせいでなかなか自分の好きなこと以外は長く続かない。
「まあそうでしょうね。他の方々はその必要がありませんから。………私は鬼殺隊で唯一鬼の首を切れない剣士…ですので」
そう言うしのぶちゃんの顔は暗く、悔しそうに手に力を入れていた。
ただ、頭がいいねと褒めたかった俺の言葉はしのぶちゃんの触れてはいけない部分に触れてしまったらしい。
どうにも言葉は難しい。
誰も喋らない沈黙の間が数秒続くとしのぶちゃんはいつも通りにニコリと笑い、俺に薬を渡した。
「私の薬がよく効く、と言っても元々の原因が解決しなければなんの意味もありません。早くその原因を解決してくださいね。」
「お大事に」と俺は席を立たされ半ば無理矢理に部屋の外へと追い出されたのだった。
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天霧(プロフ) - とても面白かったです。続きが気になります。更新頑張ってください。 (2021年9月26日 8時) (レス) @page10 id: 8490818b21 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2019年8月11日 16時