・ ページ29
「家まで送るよ」と彼に言われ、その言葉に甘えることにした。楽屋で堂々と言うもんだから、他のみんながニヤニヤと笑っているのが目に入った。
恥ずかしくなって、彼の手を引いて急いで楽屋を出てしまったものだから、その後何を言われていたのかは分からないけど。
mg「月が綺麗ですね。」
「それは…狙ってる？」
mg「どっちもです。」
一瞬、ドキッとした。“彼”に言われた時のことを思い出して。
「…ずっと、一緒に月を見てくれる？」
mg「もちろん。」
かなり捻りのある答え方をしたのに、すぐにこの返しをできるのか。胸が…あたたかい。
mg「じゃあ、俺はここで。」
「うん、ありがとう。」
自宅に着いてしまったことが、どこか寂しく感じる。もっとゆっくり歩いたり、寄り道したり…すれば良かったかな、なんて思ってしまうほど。
mg「阿部ちゃん。」
「ん？」
mg「本当は、そんな寂しそうな顔されたら帰りたくなるなるんですけど…そしたら多分、自分を抑えられる気がしないので、今日は帰ります。」
「えっ？」
mg「阿部ちゃんのことは大切にしたいので。」
わがままを言うのは良くないと必死で抑えようとしていたのに、目の前のこいつには一瞬で見破られてしまった。
mg「でも！」
「う、うん。」
mg「阿部ちゃんがあんまり無防備だと、さすがに自制が効かなくなるんで本当に気をつけてくださいね。」
「わ、わかった…。」
大きい声を出して何を言うのかと思ったら、俺への忠告だった。
俺も一応男なんだけどな…お前より年上だし。筋力は、あんまり無いかもしれないけど…。
「…め、めめ？」
そんなことを考えていたら、突然抱きつかれた。彼は俺の肩に顔を乗せながら
mg「…これ終わったら、帰るんで。」
と言った。その声はさっきまでの声と少し違い、どこか子供のような雰囲気を漂わせていた。
恐る恐る、控えめに、彼の背中に手を回すと心做しか少しだけ彼の抱きつく力が強くなった気がした。
mg「…じゃ、俺もう帰るね。」
「うん、おやすみ。」
mg「おやすみ。」
部屋に入っても、もうさっきのような孤独感のある寂しさは感じない。
何となく明かりをつけなかった部屋には月の優しい光が射し込んでいて、俺を柔らかく包み込んだ。
──彼らの恋はまだ始まったばかり──
END
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 496人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Ju(プロフ) - 玖黎さん» SNSしておられたらフォローしたいな…と思っておりました、IDが載せられないのでやはりしておられなかったんですね（;;）キリンのように首を長くして待っていたので読者として私も安心です。主さんのペースで、頑張り過ぎないで下さい。また感想綴りにきます^^ (2021年6月9日 2時) (
レス) id: daebecd63d (このIDを非表示/違反報告)
玖黎(プロフ) - Juさん» ありがとうございます、そのお言葉がとても嬉しいです！SNSをやっていない為リアルタイムで皆様の感想を聞けない分、不安もありましたが無事完結させることが出来て私もほっとしております。この先も、応援していただけると嬉しいです！ (2021年6月8日 20時) (レス) id: 02deec9f9d (このIDを非表示/違反報告)
Ju(プロフ) - コメント失礼致します。完結おめでとうございます！mmabの中で唯一待ち続け、更新中に何度も読み返し更新されては直ぐに読む！を繰り返した作品なのでとても嬉しいです。本編終了後も未だ続くと聞いて興奮が冷めません、とっても楽しみにしています！ (2021年6月8日 18時) (レス) id: daebecd63d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：玖黎 | 作成日時：2021年2月7日 18時
