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彼の一言に顔を上げると、扉の隙間から光が漏れ出ていた。もう分かる…あそこが出口だ。
黒「行って…あまり長くはもたない。」
トンッ…と背中を押されて扉の前に立つと、この世界の思い出が頭の中を駆け巡った。
あの時のような、ネガティブな気持ちにはならない。また違った感覚。ふわふわとしたような…言葉で表現は出来ないけど。
…色々なことがあったな。
海にいる家族たちに、何も言わずに現実へ帰ることが少々心苦しい。
人魚の俺がこの姿になることを協力してくれた海の魔女に、もっとお礼を言いたかった。
未だに蟠りがなくなっていない翠の彼と、もう少し話がしたかった。
俺の事を気にかけてくれた紅の彼に、もう大丈夫だと伝えたかった。
最後、俺の背中をグイッと押してくれた姫様に事の顛末を報告したかった。
そんなことを考えても、もう無駄だ。俺は、俺の世界へと帰る。無責任なのは…これで終わりにするから、どうかみなさん許してください。
あぁ…そうだった。もう一つ、忘れていた。
「王子様！」
黒「…なに？」
「───────────────────？」
黒「っ…！」
言葉を詰まらせる彼。その姿を見た俺も、何だかつられそうだった。
でも『人魚姫』を知っていた彼なら、あれは意図して言っていたんじゃないかと思った。それはどうやら…合っていたようだ。
黒「…ねえ、亮平。最後に一つお願いしてもいい？」
「うん。」
黒「今の…俺の名前、呼んで欲しい。」
これが最後。きっとこれは、俺と…彼のけじめだ。
「蓮。」
黒「…うん。」
「…また、ね？」
そう言った俺は、これ以上思い留まることが無いようすぐに扉に手をかけた。彼も…何も、言わなかった。
未練が無い…と言えば、今は嘘になる。でもいつかは明るくこの不思議な体験の話をできるようにするから。
扉を開け、光の中を進んでいく。…そういえば、さっき見えた空には美しい満月が輝いていた。
あんなに偽物だなんだと言っていたくせに、今は美しいと平気で言う。少しだけ…自分の考えが阿呆らしく思えた。
王子様…いや、蓮。
俺はちゃんと、貴方のことが───────
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Ju(プロフ) - 玖黎さん» SNSしておられたらフォローしたいな…と思っておりました、IDが載せられないのでやはりしておられなかったんですね（;;）キリンのように首を長くして待っていたので読者として私も安心です。主さんのペースで、頑張り過ぎないで下さい。また感想綴りにきます^^ (2021年6月9日 2時) (
レス) id: daebecd63d (このIDを非表示/違反報告)
玖黎(プロフ) - Juさん» ありがとうございます、そのお言葉がとても嬉しいです！SNSをやっていない為リアルタイムで皆様の感想を聞けない分、不安もありましたが無事完結させることが出来て私もほっとしております。この先も、応援していただけると嬉しいです！ (2021年6月8日 20時) (レス) id: 02deec9f9d (このIDを非表示/違反報告)
Ju(プロフ) - コメント失礼致します。完結おめでとうございます！mmabの中で唯一待ち続け、更新中に何度も読み返し更新されては直ぐに読む！を繰り返した作品なのでとても嬉しいです。本編終了後も未だ続くと聞いて興奮が冷めません、とっても楽しみにしています！ (2021年6月8日 18時) (レス) id: daebecd63d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：玖黎 | 作成日時：2021年2月7日 18時
