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夜だから、返事がなければ寝ていると思われるかもしれない。そう思って、急いで扉に向かった。


黒「夜分にすみません。まだ起きていらしたんですね。」


開かれた扉の先に立っていたのは王子様だった。タイミングがいいような悪いような…。今のぐちゃぐちゃになりそうな気持ちのまま、彼に会ってよかったのだろうか。


そんな不安でいっぱいの気持ちを、彼は汲み取ってくれたのだろう。


黒「少し…外の空気を吸いに行きませんか?」


と言って、俺を外に連れ出した。








黒「急に外へ行こう、なんてすみません。寒くはありませんか?」


頷くと安心したような表情を浮かべた彼。知らない…だろうな、ここが本の世界だなんて。


彼は、俺をお城の近くの砂浜まで連れてきてくれた。部屋にいた時よりも満月が視界に入ったけど、彼が傍にいると思ったら酷くほっとした。


月の光は海の水面に反射して、まるで道のようになっていた。神秘的なそれを初めて見た俺は、素直に美しいと思った。


黒「…月が、綺麗ですね。」


後ろにいた彼が突然そう言った。もちろん俺は内心パニックになった。


それはどういう意味で言ったの?素直に感想として言っただけ?でもここって本の中だし…。いや、その割に現実世界のものが転がってるよな。


考えても考えても分からない正解。とりあえず俺は、この世界にいないはずの文豪の有名なそれは無いだろうという結論に至ることにした。


彼はただ、感想を言っただけ。…そう思えるくらい、この月は美しい。


俺は彼の言葉に頷いて、また空を見上げた。








黒「少し冷えてきましたね。部屋に戻りましょう。」


暫くすると彼にそう言われた。確かに、今気付いたけど少し肌寒く感じてきた。…本当、こんな素性の分からない俺にも気を利かせてくれるんだな。


黒「さっき顔を見た時、何だか苦しそうな顔をしていたので…無理矢理に近い形で外へ連れてきてしまいました。その件については、本当にすみません。
でももし、また辛くなったら遠慮しないで下さい。お話することが難しくても、俺はただそばに居ますから。」


優しい言葉をかけてくれる彼は、なんだか太陽みたいにキラキラして見えた。


ああ、まるで“彼”みたいだ。

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玖唻(プロフ) - まほままさん» コメントありがとうございます!今まで始めるか悩んでいたのですが、2人のラジオに背中を押されました(笑)まほままさんのような温かい言葉がとても嬉しいです!これから頑張っていこうと思うので、よろしくお願いします。 (2020年9月6日 15時) (レス) id: 02deec9f9d (このIDを非表示/違反報告)
まほまま(プロフ) - はじめまして。めめあべが大好きな者です。こちらの作品は処女作なんですね!まだまだめめあべは世間ではマイナーなCPですが、美しい2人ですのでこの作品に期待しています!更新楽しみにお待ちしていますね。 (2020年9月6日 3時) (レス) id: 5fd2e2f33b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:玖黎 | 作成日時:2020年9月6日 0時

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