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青「それじゃあ行きましょうか。」
侍女の方に車椅子を押されて部屋を出ようとした時に振り向くと、まだ少し寂しそうな王子様の表情が目に入った。例えるなら捨てられた子犬みたいな。
その姿をじっと見ている俺の視線に気付いたのか、彼は控えめに手を振ってくれた。それにつられてその時は俺も手を振り返した。
けど移動の途中でふと我に返って、「さっきのカップルみたいだったな。」と思い一人で照れた。
後ろから優しい声でくすくすと笑っているのが聞こえた。でも、あまりにも恥ずかしかったから聞き間違いだと自分に言い聞かせた。
と、ここまでが数十分前の出来事。
現在、俺の前では王妃様が優雅に紅茶を飲んでいらっしゃる。その姿は見惚れてしまうくらい綺麗で…翔太の顔じゃなかったらここが本の世界だと忘れていたかもしれない。
テーブルの上には美味しそうなスイーツもたくさん置いてあって、グループの中でもそれなりに甘党な俺はその中の一つに手を伸ばした。
一口食べると、程よく優しい甘さが口いっぱいに広がった。あまりの美味しさに感動していると、正面でくすっと王妃様が笑っていた。
青「ふふっ、喜んでくれてよかったわ。美味しいでしょう?自慢のパティシエが作ったの。」
そう言う王妃様の表情はとても穏やかで、その目線の先にいたのは紛れもなく俺だった。
まるで聖母マリアであるかのようなその雰囲気に、自分の母も昔自分にそういう表情を向けていたような…そんな気がした。
青「今日は急にごめんなさい。どうしても、一度あなたとお話してみたくて…。あの子からも誘われていたのでしょう?」
〔王妃様からお誘いを頂けるなんて、とても光栄です。だからお気になさらないで下さい。〕
さっきまで王子様に見せていた勢いはなんだったのだろうと思わせるほど、シュンと叱られた犬のような姿を見せる王妃様に親しみを覚えた。
…陛下が、国民に好かれる王妃と言っていたのはこういう一面が垣間見える瞬間があるからなのかもしれない。
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玖唻(プロフ) - まほままさん» コメントありがとうございます!今まで始めるか悩んでいたのですが、2人のラジオに背中を押されました(笑)まほままさんのような温かい言葉がとても嬉しいです!これから頑張っていこうと思うので、よろしくお願いします。 (2020年9月6日 15時) (レス) id: 02deec9f9d (このIDを非表示/違反報告)
まほまま(プロフ) - はじめまして。めめあべが大好きな者です。こちらの作品は処女作なんですね!まだまだめめあべは世間ではマイナーなCPですが、美しい2人ですのでこの作品に期待しています!更新楽しみにお待ちしていますね。 (2020年9月6日 3時) (レス) id: 5fd2e2f33b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玖黎 | 作成日時:2020年9月6日 0時