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安心が大半を占めていたけど、我に返った。この方法なら、自分の名前を伝えることが出来る…と。でも、陛下はそんな意図も汲み取ったみたいだ。
赤「ああ、名前はまだ教えてくれなくていい。」
そう言われてしまった。
〔どうしてですか?〕
赤「私が先に知ったと聞いたら怒られそうだからね。」
そう言いながら困ったように、それでいて優しそうに微笑む陛下の姿は、やっぱり父親なんだなと実感させられた。
その時、ふいに陛下が俺の前に置いてあった図鑑の開かれたページを目にした。
赤「アガパンサス…か。」
〔お好きなんですか?〕
赤「そうだね。この花は昔…いや、これは言わないでおくか。これ以上言ったら一番怒られそうだ。」
教えようとしてくださるのに、王子が怒りそうだからという理由で全く情報の収集が出来ない。彼ってそんなに怒る人なの…?
赤「まあ、怒ると言っても子犬が威嚇してくるようなものだがね。拗ねたような顔をするんだ。まだまだ子供だよ。」
俺はまだこの世界に来て日は浅いし、言ってしまえば一番重要な登場人物である王子の事をあまり知らない。
でも、陛下がとても楽しそうに今までの思い出話を話してくださるからこっちまで楽しくなった。彼の知らない過去を知れたこともあるんだと思うけど。
それにしても、聞けば聞くほど思い出の内容が濃い。まるで、本当にそんな人生を歩んできたかのような…。
赤「お嬢さん?」
ぼーっとしていたようだ。陛下が心配して顔を覗き込んできた。…考えすぎだよ、ね?
〔すみません。少しぼーっとしてしまいました。〕
赤「…疲れてしまったかな。侍女を呼ぶから部屋まで送らせよう。」
陛下の手を煩わせてしまった。何だかすごく…申し訳ない。考え過ぎるの、悪い癖だな。
赤「多分なんだが…あいつが伝えたいのはそれだけではないと思う。でもそれはきっと、お嬢さんに見つけて欲しいと思っているはずだ。」
伝えたい…見つける…?
赤「大変だろうが探せばある。…残念ながらこればかりは私も手伝えない。」
陛下の仰ったことはよく分からなかったけど、大きくて優しい手に撫でられたら酷く安心した。別人なのに、微かに舘さんの温もりを感じた。
赤「…君のような娘がいたらいいのにと思っているよ。」
陛下は最後にそれだけを俺に伝えて、図書館から去っていった。
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玖唻(プロフ) - まほままさん» コメントありがとうございます!今まで始めるか悩んでいたのですが、2人のラジオに背中を押されました(笑)まほままさんのような温かい言葉がとても嬉しいです!これから頑張っていこうと思うので、よろしくお願いします。 (2020年9月6日 15時) (レス) id: 02deec9f9d (このIDを非表示/違反報告)
まほまま(プロフ) - はじめまして。めめあべが大好きな者です。こちらの作品は処女作なんですね!まだまだめめあべは世間ではマイナーなCPですが、美しい2人ですのでこの作品に期待しています!更新楽しみにお待ちしていますね。 (2020年9月6日 3時) (レス) id: 5fd2e2f33b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玖黎 | 作成日時:2020年9月6日 0時