太宰治の妹ですが何か？《弐》

桜の花弁が89枚 ページ39

［side ルーシー・モード・モンゴメリ］


モンゴメリ｢どうして──
ドアは確かに閉まった筈なのに！｣


何故！？


中島｢君の見落としは一つ。この闘いは最初から二対一だ(・・・・・・・・)。ドアが開いた瞬間に谷崎さんの『細雪』で扉の映像を偽装した。｣

モンゴメリ｢そんな……。そのうえに部屋へと
吸い込む力に腕力だけで抵抗したの？
そんなの出来るわけが｣

中島｢君は……思い違いをしている。｣


思い、違い……？


中島｢僕は強くも人気者でもない。
寧ろ生きる事はずっと呪いだった。
だから他人を妬み、怨む君の情動(きもち)はよく判る。

本当は君にこの作戦を失敗して欲しくない。居場所を失って欲しくない！

でも──

僕は弱くて未熟だから他に方法が思いつかない。｣


そう云った直後、あたしの身体はぐいっと傾いた。



モンゴメリ｢これは……！｣

中島｢飾帯(リボン)を君に結んでおいた。
引き込まれる直前に。｣

そして、今度は力強く引っ張られ、がっちりと拘束された。


中島｢異能を解除して皆を解放しろ。でないと君を奥の室(へや)に引きずり込む。｣


そんな……！！


モンゴメリ｢あたしは……失敗するわけには｣

中島｢今から手を離す。決断の時間は扉が閉まる一瞬しかないよ。｣

モンゴメリ｢だめ、待っ───｣



そして結局あたしは異能を解除した。


ああ、駄目ね、あたし。



虎の彼が喋りかけて来たけど、あたしはそれどころじゃなくて走って逃げた。



モンゴメリ｢失敗……しちゃった……っ！｣

桜の花弁が90枚 《お知らせ》→←桜の花弁が88枚

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す