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五十五本 ページ8
日向side
重いため息と共に
電子生徒手帳からゆっくりと顔を上げると…
すっかり暗くなったホテルの中庭が見えた
俺はベンチに腰を下ろしたまま
身動きが取れなくなって行った
「本気で…こんな事をさせるつもりかよ…」
これが現実なんて
とてもじゃないけど信じられなかった
それでも…これは間違いなく現実だった
いくら信じたくなくても、俺自身がそれを見聞きして
そして感じてしまった以上は…
…間違いなく現実だった
ただし…それは日常とは大きくかけ離れた現実だ
学校とか勉強とか試験とか就職活動とか喧嘩とか
散歩とか電車通学とか説教とか…
そうした日常は…もうどこにもない
「………………」
ふと頭上を見上げると
星を敷き詰めたような夜空があった
舞い落ちる雪のように
今にも手元まで落ちてきそうな星々…
この島に来て最初の夜
俺が見慣れたいつもの夜とはまったく別物の…
…美し過ぎる夜だった
そんな夜空をぼんやりと眺めていると
脳裏に“あの言葉”が浮かんだ
「『仲間を殺した生徒だけがこの島から脱出できる…』」
その言葉を聞かされた俺達は
その場に無言のまま立ち尽くしていた
そのまま誰も何も言わないまま、やがてみんなは…
…散り散りになって消えていった
そのまま迎えた最初の夜
それは、目を奪われるほど美しい夜で…
だからこそ、俺の心を酷くかき乱す
やっぱりその美しさは…
俺の日常とはあまりにもかけ離れていた
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作者名：コヒ・ミルキー | 作成日時：2023年11月18日 11時
