5【第二節 終】 ページ10
天は優しい微笑みを崩さず、陸に問いかけた
「陸は、もし願いをなんでも一つ叶えられるとしたら、何を願う?」
唐突に投げかけられた問いに、思わず戸惑った。小さい頃、病院のベットにまだいた頃に一度、天に聞かれたことがあったのを思い出した。その時は確か、オレは…『世界を救うかっこいい騎士になる!』なんて、答えた覚えがある。今考えたら無謀な事だなと思って苦笑いを浮かべてしまう
でも、そうだな。『世界を救う』なんて、本当にかっこいいし、憧れる。多分あの時、オレの病気以上に苦しんでいる人達を見ているうちに、そう思うようになったんだ
今でもそれは変わらない。けして、変える気は無い
「……世界中の人が幸せになれる世界、かな」
少し照れ臭そうに答えた陸。天は一度目を見開いて、また微笑んだ。ただ微笑んだ訳では無い、少し顔を歪めて、悲しそうに微笑んだのだ
「……そう。でも、そんなの綺麗事に過ぎない。それで陸は幸せなの?」
「うん。幸せ。みんなが幸せに笑うだけで、オレは幸せになれるよ!」
満面の笑みで、笑う陸に、胸が苦しくなる
なんて、純粋で、健気なんだろう。と。それなのに、それなのに
大人はなんて汚いんだろうか。
天は机の上に手を乗せると、反対側にある陸の手を握る。優しい温もりが感じ取れ、天は頭を下げた。小刻みに揺れる天の身体にハテナを浮かべた陸は、黙って耳を傾けた
「…陸、ボクは……ボクは…っ」
「て、天にぃ…!?」
それは数年ぶりに聞いた、天の泣き声だった
どうにも天は弱々しく見えて、陸は天の手を力強く握り返した。それに驚いた天の肩が一瞬だけ跳ねたが、天はまだ俯いたまま
こうやって、天が泣いた時は陸は黙って天の手を握る。それから、決まった言葉があるのだ
「……助け、て…りく…っ」
「っ、うん!当たり前だよ!」
白い歯を見せ、二カッと笑った陸。天がゆっくりと顔を上げた、その瞬間だった。
「いっ…!」
陸を襲った右手甲の痛み。思わず天の手から手を離し、左手で手首を抑え、唸った
ゆっくり、念入りに、甲に、刻み込まれ、浮かび上がる
____そうして、物語は始まりを迎えた
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桓騎軍モブA(プロフ) - ふぇいにゃさん» ありがとうございます!亀ではありますが、頑張らせていただきます!、そうですね!聖杯戦争という形ではstay nightやZeroを参考にさせて頂いております!キャラクターはFGOを参考に! (2018年3月1日 19時) (レス) id: e343ab819a (このIDを非表示/違反報告)
ふぇいにゃ - stay nightですかね?Fateの方は。良いですよね〜全体的に!! (2018年3月1日 0時) (レス) id: d1b94353af (このIDを非表示/違反報告)
ふぇいにゃ - にゃんと!!アイナナとFateの掛け合わせ作品とは!!私の超好みではないか((面白かったです!更新頑張ってくださいね♪ (2018年3月1日 0時) (レス) id: d1b94353af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桓騎軍モブA | 作成日時:2018年2月22日 23時