虹色の橋 (ページ44)

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人生のスクロールページ44

海外出張と言われ着いていくことになり
飛行機で複雑な想いをしたのは思い返せば数日前。

優成は仕事で飛びまわり、基本的には宿泊先のホテルには顔を出さなかった。
私自身、拘束されるわけでもなく、自由に生活をしていた。
ただし、ホテルの部屋内での話だが。

出張は約2週間。
帰国をすればすぐに大きな取引で準備をしなければならないと口癖のように言っている。

あと1週間もすれば帰国の日。

こんなにも長い時間一人でいる事に違和感を感じていたのは、ほんの2日程。
慣れとはいい意味でも、悪い意味でも不思議なもので
蘭ちゃんと竜ちゃんと離れていても心が痛まなくなった。

いや、痛まなくなった訳じゃない。

痛みに麻痺してきたのだと思う。

だって、2人のことを考えると
こんなにも目頭が熱くなって息をするのが苦しくなる。

(会いたい……)

きっと部屋にはカメラが仕掛けてある。
私は涙を流す事も、仕込まれた盗聴器に話しかけることも許されない。

(蘭ちゃん、竜ちゃん……)

高級ホテルの最上階部屋。
窓から外を眺めれば、最上級の景色が広がっていた。
青く澄んだ空に白いうっすらとした雲がかかって、ゆっくりと流れていく。
太陽の光を反射して宝石のように輝く海。

ベランダに出ることは出来ないがきっと風も暖かくて心地よいのだろう。

『草原とかに寝転がったら気持ちよさそう……』

だが、草原がありそうな街並みではないことは、一目瞭然だった。

『映画でも見よう』

私の口から紡ぎ出された言葉は、閉鎖空間に反響して
どこかへ吸い込まれるように消えた。

そしてルームサービスが持ってきたベリータルトにフォークを刺して口に運びながら
リモコンで気になる映画を探す。

ひとりぼっちの空間に電子音のみが響く。

その音が寂しさの器にまた悲しみの水を足していく。

(あと1週間……こんな日が続くのかな……帰りたいな……)

そう、思い続けながら映画を再生し始める。

私なんのために着いてきたのだろう。

灰谷side

竜｢Aを1人部屋に残すとか有り得ねぇ｣

蘭｢ぜってぇ殺す……｣

Aは寂しがりだ。
いつも俺らがそばに居なきゃ泣きそうな顔をする。

今だって絶対そうに決まってる。
独り言を言う時は必ず我慢してる時か無意識か。

今スピーカーから流れてくるAの声は震えていて、きっと我慢してるんだ。

竜｢クソジジイほんと許さねぇ｣

俺たちは日々殺意を募らせて行った。