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悲しみの果て ページ30

父「いいのか?」




薄ら笑いを浮かべ、椅子の背もたれに背を預けこちらを見る。


父「俺を殺せば商談はパーだ。そちらにはメリットはない。むしろデメリットの方が大きい」


最後に残った微々たる理性が私を止める。

奥歯をギリっと噛み締める。


耐えなければ。
今までだって耐えてきた。
苦しみにも悲しみにも痛みにも。
その果てに見つけた居場所を、またこの男に潰される訳には行かない。

銃を構える手が下に下がる。



父「そう、いい子だ。武器はみな机に置きなさい。」


私は小さな銃を机に投げる。


父「よしよし、今度は仕事の話をしようか」


取引内容を淡々と話していくお父さんだった男は
取引の条件を提示する。


それは、私自身の引き渡し。


父「A、お前とこの薬を交換だ。お前が俺の傍にいる限り無期限交渉としよう」


その瞬間入口の扉が悲鳴をあげた。


ものすごい勢いで扉が壊された……と言うべきか。


蘭「はいは〜い。その話こっちからお断り〜」

竜「A帰るぞ」


父「おぉっと、灰谷ぃ、いいのかぁ?こんなうまい話もう二度「そんなもんAより大事とは思えねぇからいらね〜」なんだと?」


竜「A歩けるか?」


コクリと頷けば体を支えられその場に立つ。
ふらりふらりと、覚束無い足取りに竜ちゃんは私を抱き上げた。


竜「もう大丈夫、帰ろ」


蘭「俺が片付けといてやるから車行ってろ」


とめどなく流れる涙と
しっかり染み付いたライラックの香り。
耳から離れない父の言葉。


父が愛したのは母ではなかった。
私が見てきた家族は……偽物だったんだ。


あの日のあの悲劇から立ち直る為の支えを完全に失った私は
竜ちゃんの首に縋り、啜り泣くしか出来なかった。

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作者名:あみ | 作成日時:2021年9月19日 14時

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