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壊して ページ29

『どうして……だってお父さんは……』


父「そう、あの日死んだ。風に見せた。」


『お母さん達は……』





父「俺が殺した」


家族で笑っていた楽しかった思い出が
砂のお城のように波に攫われ一瞬で姿を消した。



父「商談の前に思い出話をしようか。座りなさい、可愛いお姫様」


心が追い付かない。

言われるがまま、対面の椅子に座る。


父「俺と母さんは政略結婚だった。でも母さんはそれを運命だと言い、幸せになろうと努力をしていたんだ」


父の言葉が重くのしかかる。


父「だから俺もそのままごとに乗った」


─────


───デートの度に毎回ライラックの花を送った。
母さんはライラックの花言葉が大好きだった。

紫のライラックの花言葉「恋の芽生え、初恋」


俺の初恋も母さんだと思わせるにはピッタリすぎた。

そして母さんと結婚して、お兄ちゃんと、お前が産まれた。

愛なんてそこには存在しなかった。
ハズだったんだ。愛してない女との子供に。


だが、お前は美しかった。
真っ白い肌、真っ白い体毛。
際立つ血の色の瞳。


生まれて初めて心を奪われた。
そう。お母さんはお前を愛した。


どうすれば、お前が離れていかないか、毎日そればかり考えていた。

ド田舎に家を建てたのも、外部と遮断するように山奥にしたのも
全部全部お前を囲い込むため。

そして期待通り、お前は小さな世界を全てだと思い、その世界にすっぽり収まって居てくれた。

母さんも。


でもある日突然子供達のために教育学部しっかり出来る所に引っ越そうとか言い出しやがった。

帰りも遅い日があるし
最近お金の羽振りも良すぎる。

なにか怪しいともな。


そしてあの日。
カバンの奥底に隠していた薬が見つかった。

これはなんだと問いただしてきやがった。

飲んで確かめてみろよ。と、飲ませてやったさ。

体の異変に気づいた時にはもう手遅れだってのにお前の部屋に向かって走り出したから気持ちよく殺してやった。

その音に気づいたのかお兄ちゃんの部屋から物音がしたから
同じだよなぁ……。


あいつは邪魔だった。
Aをよく泣かしてたし。

日頃のお礼に最後まで苦しめてやろうと思ったんだけどなぁ。






『もうやめて』


涙が止まらなかった。
お母さん、お兄ちゃん……。

こんな、こんな身勝手な理由で……。


腸が煮えくり返る。
怒りがわきあがると同時に吐き気を覚える。


胸元に隠し持っていた銃を構える。


『貴方は私のお父さんなんかじゃない』

悲しみの果て→←戦慄



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作者名:あみ | 作成日時:2021年9月19日 14時

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