報酬 ページ16
私に帰ろうと竜ちゃんがお姫様抱っこをしようと腕を回した瞬間だった。
三「ここまで調べさせといて報酬は無しか？」
蘭「どうせ調べたのは九井辺りだろうが」
三「はぁ？この春千代様が直々に調べてやったのにかよ！」
竜「は？お前が？明日は槍でも降るのか？」
三「ふざけんなスクラップにすんぞクソ」
これ以上蘭ちゃんと竜ちゃんに迷惑はかけられない。
私の体を支えてくれている2人の腕からスルリと抜け出し
三途さんの前に立つ。
『どうにでもしてください。それで報酬になるなら』
三「ほー。いいど……「ダメに決まってんだろ」遮んな」
竜ちゃんが私の腕を引き、もう一度自身の腕の中に匿う。
蘭「いくら」
三「後日連絡する」
蘭「わかった。三途、」
三「あ？」
蘭「次Aのことそーゆー目で見たら命はないと思え」
三「へーへー」
2人は私を抱えアジトを後にする。
帰りの車では一切会話が無かった。
敵討ちをしたいとか思っていた訳じゃない。
ただ、知りたかった。
いやでも知れたのにこの虚脱感。
ぽっかりと胸に穴が空いたような
その穴が空いて、残ったのは言い表しようのない、まさに虚無だった。
駐車場に車を停め、車から乱暴に引っ張り下ろされ
そのまま部屋まで引き摺られる様に走った。
玄関のロックをかけてすぐ
手を引いていた蘭ちゃんから噛み付くようなキスが降ってくる。
唇を噛まれ、舌を吸われたと思えば歯を立てられる。
息をするのも必死で口内に溜まった唾液も飲み込むことに気が回らず顎へと伝う。
3人だけの空間には水音だけが響き渡る。
唇からジワリと血が滲む。
キスに鉄の味が混ざると、蘭ちゃんは離れて行く。
蘭ちゃんの口の端に血が付いていて、それすらも似合う。
酸素不足で思考が上手く回らない。
蘭「Aは俺らのもんだ。勝手に逃げんのも、死ぬことを選ぶことも許さねぇ。覚えとけ」
『は、い……』
目にいっぱいに溜まった涙は視界を歪め、蘭ちゃんが今どんな顔をしているのかもわからなかった。
竜「休もう」
竜ちゃんに連れられ寝室へ向かう。
着替えだけを済ませてベッドに転がる。
瞳のカーテンを閉じれば浮かぶのは蘭ちゃんと竜ちゃんの顔で
家族の顔は浮かんでこなかった。
溺れていく。
渦を巻いて私を飲み込む。
この渦からは出られない。
"愛"と、名付けられたこの海から
彼らが手を離すまで抜け出すことは出来ない。
それを体に刻まれる。
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作者名：あみ | 作成日時：2021年9月19日 14時
