天使の声6《6》 ページ6
駅前の映画館のチケット売り場前で茉莉さんと待ち合わせしていたが、渡辺さんのスマホで写真を見てるから彼女が茉莉さんだとすぐにわかった。
チケット代を茉莉さんに渡し、その間映画の原作の話をしながら時間まで入場口で待った。
茉莉さんは写真で見るよりはるかに可愛い。
「いろいろ本は読みますけど映画化したからといって今まで見ることが無かったから今日はすごく楽しみです」
「私は原作より映画が先です、映画を見てよかったら原作を買って読みます」
「全く逆ですね」
「でも最近は榎本さんが本を貸してくれるので原作が先になってますけど」
「もうすぐ入場できます、ポップコーンとドリンク買ってきます」と言って売店に向かった。
買った物を僕が持ち指定されてる席に座り上映されるまでの間仕事の話しなどした。
渡辺さんからいろいろ聞いてるので以外と話しやすかった。
上映が終わり夕食食べて帰る事にし近くのレストランに入った。注文を済ませ話題はやっぱり見た映画の話。
「誰か恋をするとキラキラする自分になれると思うけど、実際はそんなにうまくいかない事が多のがよくわかりますよね、原作に忠実に描かれていましたよね」
「はい、終わった後の余韻が凄くて頭から離れません」
「ほんと、人を好きになることの難しさや切なさ、静かで激しくて美しくて、それでいて汚れてる、自分が体験しているかの様な気持ちにさせてくれました」
「同感です」
食事をしながらも映画の話が堪えることはなかった。
翌日、いつものように淡々と仕事をし定時で仕事を終えて7時前に葉子さんの店に行く。
祐樹はもうすでにビールを飲んでいた。
「榎本君、いらっしゃい！」
葉子さんの声優さんのような声を聞くと今日一日の疲れが取れる。
カウンターに座ってる祐樹の隣に座り、黒いボードに書いてあるお品書きを上から順に注文した。
小松菜のおひたし、なすの味噌炒め、牛肉と笹がきゴボウ炒め………それと白菜の酢醤油煮、それとビールください。
注文を終えビールを飲みながら「うん、うん」と答える俺。
なぜか祐樹と飲んでる時は時間が過ぎるのが早い。
祐樹はお喋りが上手く僕を楽しませてくれる。
祐樹君の仕事の失敗を笑ってしまうと祐樹君がホッとしたように僕に言った。
「榎本、彼女は？」
僕は「彼女いない歴38年」と答えグラスのビールを飲んだ。
「好きな人は？」
「…………。」
そして僕は何度も聞いてくる祐樹に一目惚れした天使の彼女の話をし始めた。
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作者名：りたのすけ | 作成日時：2019年8月3日 19時
