天使の声16《16》 ページ16
土曜日、約束の時間迄後少し、僕は電車を降りホーム中央の階段を上る、自然と早足になっていた。
時間ぴったりに約束の場所に着くと彼女の姿はすでにあった。
白いプルオーバーシャツにベージュのガウチョパンツ、春らしい色使いが素敵で見とれてしまう。
僕は白いシャツにブルージーンズ、朝から洋服タンスの中の服を出しては着ての繰り返しで、結局最後はこれにおさまった。
彼女と全てにおいてアンバランスはわかっているけど服ぐらいはもう少しお洒落してもよかったと後悔した。
僕達は二人並んでにぎやかな繁華街の方に歩いていく。
途中何度か彼女の腕が僕の腕に当たりその度にビックとする。
手を繋いでるわけでなくてもたったそれだけで胸がドキッとした。
横にいる彼女は初めて会った時と同じいい香りがする〜まるで梨の花のような香りが……。
歩きながら僕は彼女に「榎本龍之介と言います、38才です」と自己紹介する。
「梨華、松宮梨華 23才です」初めて知った彼女の名前。
「素敵な名前ですね」
「ありがとう」
「松宮梨華さんはOLさんですか?」
「食品メーカーに勤めてます」
「松宮梨華さんは今日は仕事お休みですか?」
「はい」
「松宮梨華さんの出身はどこですか?」
「名古屋です、生まれも育ちも名古屋です」
「松宮梨華さん、趣味はなんですか?」
「多趣味です、本を読むのは好きです」
「松宮梨華さんは一人っ子ですか?」
「はい」
「松宮梨華さん、後で連絡先を交換してもらえますか?」
「はい」って言って梨華さんは笑った。
質問攻めがいけなかったのかと僕がキョトンとしていると「あのぉ……榎本さん、そのフルネームで呼ぶのをやめませんか?」
「すみません、松宮梨華さん」と言って頭を下げると彼女ゎまたクスッと笑う。
「あっ…………」
「すみません」
「なんて呼んだらいいですか?松宮さん?それとも梨華さん?」
「友達みんな梨華って呼んでいるから梨華でいいですよ」
「呼び捨てしちゃってもいいんですか?」
「いいですよ」と言って微笑んだ。
「榎本さんは皆さんからどう呼ばれてますか?」
「仕事仲間も皆、榎本です、名字で呼ばれてます」
「あだ名は?」
「前の会社でみそごろうって呼ばれてました」
「……?みそごろう?」
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作者名:りたのすけ | 作成日時:2019年8月3日 19時